「農民」記事データベース20030602-588-07

土作りと有機物の使い方(12)

涌井 義郎


食品廃棄物を活用する

 年間の食品廃棄物は二千万トン、含まれる窒素量は十万トンを超えると推定されます。農業生産全体で使う窒素施肥量が六十万トン余ですから、食品廃棄物は廃棄せずに使わないといけません。

 全国的に生ゴミの発酵処理機が普及し、減量化とリサイクルが進みつつあります。鯉淵学園でも食堂生ゴミを発酵処理して、肥料や豚のエサにする研究を行っています。

 肥料にするには、リン酸成分がやや少ないことと油分が残るなどの欠点があります。そこで、鶏糞やリン酸質グアノなどと混ぜて再発酵させ、ボカシ肥料にするのがよいと考えます。持続力のある良い有機質肥料となります。地域住民、学校、病院、企業などと協力し、生ゴミ処理機の活用で、ぜひ農業利用を進めてください。

 おわりに

 「土作りと有機物の使い方」と題した技術紹介は今回で終わります。字数の関係から十分に説明できなくて、申し訳なく思います。

 堆肥の作り方や使い方は、地域によって材料も方法も異なります。皆さんの地域の事情に合わせて工夫されるとよいと考えます。ボカシ肥料の作り方についても、容器内で嫌気発酵させる別種のボカシもあります。

 前回までに紹介した有機物マルチは、気温の低い東北・北海道では地温を上げられないので不向きだ、との意見もあります。フィルムマルチと併用してみてください。

 農業者は基本的に平和主義者である、と幼い頃からの経験でそう考えています。人と人が日常的に相和し、助け合い支え合う暮らしが農の基本だと思うのです。土作りを五十年・百年の計で考えるように、わずか六十年前の戦争の悲惨さ、他国への暴挙を忘れてしまわないよう、農と食の立場から訴えていきたいものです。

(鯉渕学園 教授)

(新聞「農民」2003.6.2付)
ライン

2003年6月

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