「農民」記事データベース20030526-587-06

土作りと有機物の使い方(11)

涌井 義郎


有機物マルチの効果 その2

 (2)雑草抑えと天敵集め

 優れた農業技術の妙味は、一つの作業が複数の効果を生み出すところにあります。有機物マルチは、土作りに有効であるとともに、その過程で雑草を抑え、天敵昆虫を集めるので害虫防除効果があるのです。

 雑草種子の多くが発芽に光を必要とする「光発芽種子」です。したがって有機物マルチで光を遮断すると雑草の発芽を抑えることができます。発芽しても物理的に生育を邪魔するので弱ってしまいます。

 敷きワラなどの方法で有機物マルチを行うと、地面をチョロチョロ走る地グモが際だって多くなります。こうしたクモはコナガ、ハモグリバエなどの幼虫を捕食します。昆虫ではゴミムシ、ニワハンミョウ、コメツキ(いずれも甲虫目)などが増えて害虫捕食に役立ちます。

 アブラムシを捕食するテントウムシにとっては、有機物マルチが盛夏期の暑さ避けや越冬場所になり、畑にたくさん集める効果があります。

 テントウムシの中にはうどんこ病菌を食べる種類もあるので、病害予防も期待できます。甲虫類の死骸はキチン質の供給になり、キチン質は病原菌を抑える放線菌を増殖させる効果もあります。

 こうした有機物マルチの効果は、特定の草を生やす「草生マルチ」でも得られます。うね面にフィルムマルチを使う場合は、うね間に草生や敷きワラを行うのも一つの方法です。

 有機物を運んで敷くという作業は大変だと思うでしょう。しかし、フィルムマルチを張ったり、処分したりする作業と比べてそんなに違いません。省資源、作業機省略などの複合効果を考え合わせれば、工夫をする甲斐があります。

 土作りにとっても、天敵集めでも、農薬使用はやはりマイナスですから極力減らします。

(鯉渕学園 教授)

(新聞「農民」2003.5.26付)
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2003年5月

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