有事法案と食糧法改悪案の廃案に全力を二〇〇三年五月十五日 農民運動全国連合会
一、自民、公明、保守新の与党三党と民主党は、五月十五日、衆院本会議で有事法案の採決を強行した。農民連は、満身の怒りをもってこれに抗議する。 これまで、少なくとも建前のうえでは、自衛隊は米軍の武力行使と一体となる活動をできなかった。しかし有事法案は、米軍支援の自衛隊が攻撃される「おそれ」や「予測」がある事態では、武力行使できる仕組みになっている。これは、憲法違反の海外武力行使法案そのものである。 さらに有事法案は、イラク攻撃のようなアメリカの無法な攻撃にも、地方自治体や国民を罰則付きで強制動員する。未曾有の規模で広がった「イラク攻撃はするな!」の集会やデモも規制の対象にされかねない。 有事法案は、国民に戦争への「協力」を義務づけ、国民の自由と権利は「制限が加えられることがある」と明記している。さらに、土地を強制的に取り上げたり、立ち木の処分や家屋の形を変えたりすることもでき、アメリカの戦争に参戦する態勢を、有無を言わせずつくりあげるものである。 二、与党と民主党の間で合意された修正案は、有事法案の危険な本質を少しも変えるものではない。 「基本的人権の尊重」という文言が入ったというが、もともと国民に戦争協力を強制するところに有事法案の本質がある。この文言を入れたところで、その本質をごまかす粉飾にすぎない。 さらに与党と民主党が合意した修正案をいっさい国会で審議せずに採決したことは、民主主義にそむく重大な汚点である。有事法案の廃案をめざす共闘から離脱し、法案の衆院通過に手を貸した民主党に、万感の思いを込めて抗議する。 三、有事法案を廃案にするたたかいは、これから正念場を迎える。農民連は参院で法案を葬り去るために全力をあげる。 有事法案では物資の「統制」や「配給」も検討されている。農村はかつて、戦争に労働力を奪われ、丹精込めた米や農畜産物も強制的に供出させられた。この痛苦の歴史を繰り返してはならない。 有事法案で国民の生命と財産を守るというが、四〇%にまで低下した日本の食料自給率はすでに非常時である。このうえさらに米改革で日本農業を根こそぎ押しつぶそうという小泉内閣が、国民の生命と財産を守る意志も能力も持たないことは明らかである。 自国の農業を守り、国民の食料は自国でまかなうことこそ、最大の「備え」である。有事法案とともに今国会にかけられている食糧法の改悪案は、日本農業の根幹である稲作を崩壊させ、国民の食料をますます外国に依存させたうえで、有事の「配給」や“供出”を罰則付きで強要する逆立ち立法であり、農民連はこれを阻止するたたかいに全力をあげる。 全国津々浦々の草の根から、「有事法案反対」「食糧法の改悪はやめろ!」の声をあげ、共同を広げよう! 農民連は、平和を愛し、安全・安心な食料を食べたいと願う人々に心から呼びかける。
(新聞「農民」2003.5.26付)
|
[2003年5月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2003, 農民運動全国連合会