「農民」記事データベース20030519-586-13

土作りと有機物の使い方(10)

涌井 義郎


有機物マルチの効果

 (1)土作りは表土から

 土作りは、有機物を土の中に「入れる」すなわち「混ぜ込む」ことだとつい考えてしまうように思います。しかし、混ぜ込むようになったのは耕耘機やトラクターが登場してからのことで、昔は必ずしもそうではありませんでした。

 有機物は毎回混ぜ込む必要はありません。むしろ、最初は土の表面に「敷いて」表土保全に使い、その作が終わってからすき込む方が土作りに役立つように思います。

 その理由は、(1)固い地面にワラを厚く敷いておくと数カ月後にはワラの下の方がほどよく分解し、ミミズが繁殖し、固かった地面はいつのまにかフカフカと柔らかくなっていることをご存じかと思います。これは表土からの土作り効果で、森林の「腐葉土に覆われた柔らかい土」と同じ作用です。ミミズや微生物が分解有機物を土に混ぜ込んでくれるのです。この効果を畑でねらいます。

 (2)堆肥作りは手間がかかります。そこで、堆肥材料をうね間に敷いて畑で分解を促進させると、堆肥作りを省略できます。ワラや落ち葉、刈草、生ゴミ、野菜クズなどいろいろな有機物をマルチに使うということです。土の表面にいる昆虫や微生物が下から少しずつ分解してくれて、栽培終了後にトラクターで耕耘すれば、堆肥施用と同じことになります。

 有機物マルチは土の寒暖の差を小さくし、土の過乾燥を防ぎ、雨風を遮断するので、表土での有機物分解菌の活動を促し、表土から団粒を作ってくれます。こうした効果はフィルムマルチでは得られないものです。

 フィルムマルチと比べてどっちが便利かは栽培作物にもよるし、総合的に考えますが、土作りの観点からはぜひ一考してみる価値があります。

(鯉渕学園 教授)

(新聞「農民」2003.5.19付)
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2003年5月

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