「農民」記事データベース20030519-586-10

演劇

現代を検証する

3人の制作家による 戦争と日本人

東京 両国シアターX(カイ)


 三人の劇作家が「戦争と日本人」をテーマにした作品を書き上げました。津上忠「演歌師・添田唖蝉坊の或る日々」、平石耕一「柱の疵」、さいふうめい「明日咲く」の三本。それぞれ個性をいかした作品は、明治、大正、昭和という時代背景のなかで、「戦争とは」「日本人とは」という命題を追求したものです。

 「演歌師…」は、明治・大正の時代に活躍した演歌師・添田唖蝉坊の伝記から、明治末期の数年間に焦点をあて、歌を通して動乱の時代を力強く生き抜く人びとを描いた作品。「柱の疵」は、島崎藤村の「嵐」を下敷きに、第一次大戦後の冬の時代に生きた知識人の家族の姿を描いた作品。「明日咲く」は、第二次大戦の終戦前夜の特攻基地・知覧を舞台に、出撃する四人の特攻隊員の揺れる心情を描いた作品。この三作品を同一の演出家、セット、キャスト、スタッフで一挙上演するという試みです。

 演出の山本健翔さんは演劇集団円を拠点に活躍しています。「三人の劇作家はそれぞれのスタイルをもっています。しかし、共通しているのは生活者と戦争ということです。人は死ぬ前まで生活していますが、理不尽にも戦争は人の命を奪ってしまいます。生活は突然の中断を余儀なくされます。三人が描いたのはそんな生活です。明治、大正、昭和という三つの時代を背景にした作品は、繰り返されていく歴史の中で、現代日本の私たちがどこにいるのかを問いかけています。それは現代を検証する作品であり、三つの作品が合わさって現代の映し鏡になるように仕上げたい。人が人を殺すことを許す理念など、世界のどこにも存在しないのだということを念頭に演出したい」と意欲的です。

 出演は披岸喜美子(民芸)、鴨川てんし(燐光群)、浦山迅(プロダクション・タンク)、ささいけい子(ショウデザイン舎)、丸山貴子(前進座)のほか、若手新鋭の役者たちが揃っています。

(鈴木 太郎)


 *5月21日〜25日、東京・両国・シアターx(カイ)

 連絡先=オフィス・ワンダーランド 電話03(3469)5830

(新聞「農民」2003.5.19付)
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2003年5月

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