「農民」記事データベース20030512-585-07

土作りと有機物の使い方(9)

涌井 義郎


土を裸にしない、雑草も宝物

 子どもの頃、農家の次男坊だった私は、草取りが大嫌いでした。小学校にあがった頃から、夏場はほぼ毎日、帰宅すると畑に連れ出され、腰に草取り籠、手に小鎌を持たされて畑の中を這いずり廻りました。嫌いだったので、畑の隅からこっそり這い出て山に逃げ込み、暗くなるまで遊んで帰ると親父の拳固が待っていました。

 一本も残さず草を取ること、それが農業の基本だと教え込まれましたが、私は疑問を感じています。経験的には草のある畑の方が肥沃で、病害虫も少ないのです。

 草のない裸の土は、風雨の侵食で表土が飛ばされ流されます。寒暖や紫外線に直接さらされると表土の団粒は壊れ、乾燥しやすくて昆虫も微生物も棲みにくく、作物にとりつく病原菌や害虫だけが繁殖します。草退治のために耕耘しすぎると土が痩せます。除草剤は水を汚染し、生態系を損ないます。草取り労力はばかになりません。

 草も光合成し、これをすき込めば土に炭素が供給されます。炭素は土を育む微生物のエネルギー源になります。草の下は適度の湿り気を保ち、風雨を遮断して表土の構造を守ります。草のある畑ほどミミズが繁殖します。ミミズは土を肥沃にする有用動物です。

 草のある畑にはゴミ虫(有機物分解)や地グモ、テントウムシ(害虫を捕食する天敵)などが多くなります。草は病原菌の寄主となることもありますが、それ以上に拮抗菌の保護にも働くのです。

 地域にもより、草の種類・季節にもよります。夏季は管理機除草、刈り倒しも必要です。フィルムマルチが役立つ栽培もあります。雑草がどんな場合でも有用とはいえませんが、「畑のフタ(雑草緑肥・雑草マルチ)」として活用する価値があると思うのです。

(鯉渕学園 教授)

(新聞「農民」2003.5.12付)
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2003年5月

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