「農民」記事データベース20030512-585-01

食の安全と国民の健康守るトリデ

重金属分析機器いよいよ導入

 農民連食品分析センターは四月、重金属を分析する装置一式を正式に発注しました。これは、食品分析センターの機能強化の呼びかけに応えて寄せられたカンパによるもの。「食の安全と国民の健康を守る砦として、その役割をさらに果たしていきたい」と力強く語る石黒昌孝所長。昨年、輸入冷凍ホウレン草の残留農薬を告発し、事実上輸入をストップさせた食品分析センターが、大きくパワーアップします。


食品分析センター正式発注

機能強化でみなさんの期待に応えます

 輸入農産物の重金属汚染を調べる

 今回発注した分析機器は、カドミウムやヒ素、水銀、銅、亜鉛、鉛などの重金属を分析する「原子吸光光度計」と、その関連装置。配管工事なども必要ですが、一日も早く業務を開始したいと急ピッチで準備を進めています。

 なぜ今、重金属の分析を強化するのか――

 その理由の第一は、重金属汚染の恐れがある輸入米を検査すること。経済成長が著しい中国などでは、河川の汚染が深刻な問題になっています。

 〇一年に農民連が行った中国東北部への視察では、大河・松花江の河畔に化学工場が建ち並び、現地の農場の水利責任者は「松花江の水は重金属で汚れていて使えない。地下水に頼っている」と語っていました。

 中国から〇二年度に輸入されたミニマム・アクセス米は、主食用と加工用を合わせて約十万トン。それらが、重金属に汚染されていないとは言いきれません。

 ところが国の検査は、異物混入や残留農薬、それと重金属ではカドミウムだけ。食品衛生法に基準がないため、他の重金属の検査は行っていません。輸入冷凍ホウレン草もそうでしたが、食品分析センターが世論を喚起し、より厳しい安全チェックを国に求めていくことが必要です。

 農村環境守り安全・安心の農産物届ける

 二つめの理由は、安全・安心なお米や農産物を消費者に届け、日本の農業と農村を守るため。不法投棄された産業廃棄物などが農村の環境を汚し、農業の生産基盤を脅かしているからです。これまでも食品分析センターには、「産廃からしみ出す雨水が心配だ。調べてほしい」といった要望が数多く寄せられていました。

 不法投棄を厳しく取り締まり、産廃処分場をつくる場合でも業者や行政に万全の対策をとらせることは、住民の健康と豊かな農村の自然を守るうえでも重要です。

 昨年十二月、三井金属鉱業の工場の地下水から環境基準値を二千四百四十倍も上回る水銀など重金属六種類が検出された例もあります。今回導入する装置は、水質分析もできる高精度なもので、この点でも大きな威力を発揮するでしょう。


高感度、効率よく分析できる装置

 基本となる装置は、原子吸光光度計の「日立ゼーマン式Z‐5010型」(写真(1)〈写真はありません〉)です。原子吸光光度計は、重金属が燃焼するときに出す固有の色を解析し、試料に含まれる重金属の種類や量をはかる装置。「Z‐5010」は、これを二種類備えています。

 一つはppmレベル(百万分の一)の分析を行うフレーム法。もう一つのグラファイト炉法は、ppbレベル(十億分の一)や少試料の分析ができ、水質検査や原産地の特定にも役立つ高性能な装置です。

 写真(2)〈写真はありません〉は、「マイクロウエーブ高速試料分解装置」。重金属の分析では、有機物の試料はあらかじめ“灰の状態”(無機物)にしておく必要があります。

 以前はこの前処理に何時間もかかりましたが、「マイクロウエーブ」は十二検体を同時に十五分ほどでやってしまい、効率よく分析を進められます。

 超純水製造装置(写真(3)〈写真はありません〉)は、不純物を限りなく取り除いた純水を作る装置。微量の重金属を正しく測定するには、わずかな不純物もじゃまになるので、こうした装置が必要になります。

 その他にも、ドラフトチャンバー(強制排気装置)やボンベ、配管施設などを備えます。食品分析センターでは、一刻も早く業務に入れるよう準備を急いでいます。


食品分析センターへの励ましや期待の声

 ○先日TV放送を見ました。分析センターのデータが国を動かしたのですね。これからも応援していきます。

 ○十年前、子どものアレルギーがひどく、アワ、ヒエなどを食べさせました。今でも給食は卵を除いています。当時を思い出すと涙が出てきます。夫婦ともフルタイムで働いており、残業続きで、子どもに安全なものをと思いながらできていません。少しですが役立ててください。

 ○食品分析センターの仕事は、農民連との産直にとりくむ私たち新婦人の運動に確信を与え続けています。ありがとうございます。

 ○この度の輸入中国野菜の残留農薬の発見は勲章に値しますね。今後もご活躍を期待します。

 ○食と農、主食の米の問題を考えるとき、農民連の存在は生産者と消費者、国民の宝です。

 ○分析センターの告発は、国民の食の安全に対する国の無責任さをいっそう明らかにしました。その役割は、国民にとって“正義の味方”です。敬意を表します。

 ○昨今の企業による食の安全破壊には怒りでいっぱいです。農民連の活動に期待しています。年金所帯ゆえ、少しの金額ですが、協力させていただきます。

 ○食の安全にとても危機を感じています。稲の遺伝子組み換えも阻止してほしい。いま地球環境が狂いだしており、いつ食料不足が起こるかわかりません。食の自給率を少しでも高め、質の向上に努力してほしいです。

 ○「農民」でいつも分析センターの活躍を読んでいます。日本農業の正しい発展のためにがんばってください。

 ○一人一人の力はわずかですが、多くのみなさんの応援で充実した分析センターが続けられることを願っています。今後も期待しています。

 ○農民連と分析センターが安全な食品を求める世論をまき起こしたことはすばらしい。これからも分析や情報をよろしくお願いします。

 ○食物の安全性はゼロに近い状態。消費者は不安でなりません。農民連の食品分析センターの強化に期待します。

 ○本来なら国が責任をもってやることで、そのために税金も払っているはずなのに、それまで手をこまねいているわけにはいかないので、お役に立てればと思います。

 ○中国産ホウレン草の農薬を摘発したのが農民連食品分析センターだったと知り、とてもうれしかった。これからもよろしくお願いします。

(新聞「農民」2003.5.12付)
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2003年5月

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