“準産直米”で飛躍を期す今度は米でがんばるぞ長野県 佐久楽農倶楽部
「こんなに胸がときめいたのは久しぶりだ。おらほうの村のみんなにこのことを伝えたい」――長野県農民連と「佐久楽農倶楽部」が開いている米問題学習会や「米づくり車座集会」で、こんな声があがっています。 厳しい冬が去り、今年の米づくりがスタートしました。「苗作りの間に、政府が進める“米つぶし”の内容を知らせて、農家の生き残る道を示すことが大事だ」。長野県産直協の小林吉彦会長は力強くこう語ります。米卸を通して街の米屋さんに、“顔の見える米”を届ける準産直のとりくみで飛躍をつくろうと米部会を立ち上げた「佐久楽農倶楽部」は今、地域懇談会の開催と米卸業者との懇談に全力でとりくんでいます。
米改革、これは一大事だ三月二十一日、大阪府民食農会議の佐保庚生事務局長を講師に開かれた「米作り車座集会」には、二十人をこえる稲作農家が集まりました。 「今国会に上程されている食糧法『改正』案が通れば、農政は一路“米つぶし”へ。輸入米が幅をきかせ、米の買いたたきが一気に激しさを増す」と話す佐保さん。これには会場から、「農協からは何も聞かされていない」「全農は大手量販店にシフトするというが、スーパーにしか米を売らないということか」といった声があがりました。 佐久産直センターの土屋浄事務局長は、「“これまでとだいぶ様子が違うぞ”という空気が広がった」と振り返ります。 そして、話はいきおい準産直米に。「佐久楽農倶楽部」に米部会を立ち上げて、栽培基準を作り、愛称も決めよう、都会の米屋さんに“顔の見える”佐久のお米を届ける運動を強めようと話は盛り上がりました。
不安が広がるなかで米部会の結成を受けて、各地で地域懇談会が始まっています。 佐久市の隣の浅科村は、「五郎兵衛米」という良食味のお米のふるさと。この村で三月二十九日に開かれた「車座集会」には、九ヘクタールの大規模稲作農家が初めて農民連の集まりに参加しました。この農家は、「“顔の見えるお米を届ける”というやり方は、おれの思いと同じ」と言って、試食用のお米の提供を快く引き受けました。 農家を誘って参加した村議の掛川節(みさお)さんも、「この呼びかけはいま不安でいっぱいの農家の気持ちにぴったりくる」といいます。「農協はこの秋、これまでどおり米を買うのか、米価はいくらになるのか」――その不安に拍車をかけたのが「今年から村は減反から手を引く。助成もなくなる」といううわさでした。 「結局、加工米の価格に上乗せする村の助成は残りましたが、農家の不安はいっこうに解消されません」という掛川さんらは、もう一回り呼びかけを広げて、二回目の「車座集会」を準備しています。
胸のときめきを村のみんなに四月一日には上田市でも、長野県農民連主催の米問題学習会が開かれました。全国連の笹渡義夫事務局長は、「農民を米づくりから締め出す米改革に抗して、いい米をがんばって作り、国産を求める多くの国民に届けよう」と呼びかけました。 この話を、胸をときめかして聞いていた農家がいます。「今ほど、額に汗して働く農民が寄り集まって、自らの生きる道を考えることが求められているときはない」と語る小諸市の清水保昭さん(74)です。 清水さんは、仲間の兼業農家に呼びかけて、「佐久楽農倶楽部」のネギ部会にも参加しました。「ここしばらく、おもしろい動きになってきた」。“ものを作る”農民の誇りが、清水さんらを駆り立てています。
“平成の百姓一揆”をそして四月二日、「楽農倶楽部」米部会長の斎藤増夫さんと小林さんは、大阪に出向き、佐保さんと農民連米対策部の横山昭三事務局長の仲立ちで米卸との話し合いに臨みました。社長は席上、「WTOの関税引き下げは反対だ。農家自らがもっと声をあげ、大反対すべきだ。産地が元気だと、米屋さんも『いける』と元気が出る」と語りました。 この話は、参加した農民を励ましました。「農業つぶしの悪政のなかで、農民は知らぬ間に元気をなくしていたのではないか。しぼみかけている農民の心を“もの作り”で揺り動かし、“平成の百姓一揆”といわれる運動を起こしたい」と話す小林さん。佐久の地はいま、大いに燃えています。
(新聞「農民」2003.4.28付)
|
[2003年4月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2003, 農民運動全国連合会