土作りと有機物の使い方(7)涌井 義郎
健康な育苗用土を作る昔から「苗半作」などといわれます。苗の育ちの良し悪しがその後の生育の要(かなめ)です。育苗床で苗を育てる果菜類の場合は、健全な育苗用土をいかに準備するかが大きな課題です。育苗用土の要点は、(1)苗が求める栄養分を十分に含んでいて長効きする、(2)保水力があって排水性も良い、(3)病原菌がいない(あるいは拮抗菌がいて病原菌の増殖を抑える)の三点です。 (3)では、毒ガス消毒・蒸気消毒、焼き土などで滅菌する方法が行われてきましたが、私は奨励しません。滅菌した土はかえって危ないのです。健全な土とは生き物のいる土です。拮抗菌が働く土を作れば病害は抑えられますし、有機物分解菌が作り出すホルモン物質も効いて、がっしりした健康な苗を育てられます。 健全な用土の基本は森林の腐葉土です。腐植が多くて団粒が発達し、ミネラルも豊富です。肥料持ちがよく、保水力も排水性も保温性もあります。腐葉土には放線菌が多くて病原菌を抑えますから、用土の基材は熟成落ち葉堆肥が最良です。
苗の時代はリン酸(P)を特別にたくさん欲しがります。リン酸が不足すると苗が赤黒くなったり育ちが遅くなったりするので分かります。窒素の二倍以上含ませるのが理想です。リン酸の材料としては、米ぬ かと鶏糞が適します。リン酸質グァノも使えます。 これらを落ち葉に混ぜて、じっくりと一年かけて熟成堆肥(腐葉土)を作ります。普通の堆肥は完熟でなくてもなんとか使えますが、育苗用土では問題が起こりますので必ず熟成させます。真っ黒で土のようになったポロポロ堆肥が理想です。 熟成用土を準備できない場合は、清潔な赤土(深層土)にボカシ肥料を混ぜて水をかけ二〜三週間寝かせれば使えますが、必ずしも健全とはいえません。 (鯉渕学園 教授)
(新聞「農民」2003.4.21付)
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[2003年4月]
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