「農民」記事データベース20030421-583-05

堆肥舎に高い税金

審査請求でたたかう群馬の山村 隆さん

関連/償却資産が“当たり前”

 「まず見てください。屋根と柱、塀が一辺にあるだけ。この堆肥舎が家屋だといい、高い税金をかけてきている」――群馬県吾妻郡長野原町の酪農家・山村隆さん(49)は開口一番、怒りの声を発します。群馬農民連の会員である山村さんは、小寺弘之群馬県知事を相手に不当な課税処分に対する審査請求を出してたたかっています。四月三日、群馬県在住の畜全協の住谷輝彦会長と一緒に山村さんを訪ねました。
(西村正昭)


 山村さんの案内で残雪の解けたぬかるみに転ばないようにしてたどりついた堆肥舎。屋根と高さ七メートルの柱、一辺に一・八メートルのコンクリート塀のある面積八百平方メートルの処理施設。堆肥舎の中に入ると、寒風が吹き抜け、手足が凍えます。「風を防ぐこともできないのに、なぜ家屋なのか」とふるえながらカメラのシャッターを切りました。

 政府は畜産農家に厩肥処理施設の設置を義務づけた家畜排泄物処理法の本格施行(〇四年十一月)に向けて、補助金を出して堆肥舎などの建設を進めています。山村さんは、「王領地コンポテック」を立ち上げ、その代表になり、平成十三年度農水省補助事業の畜産振興総合対策事業(資源循環型畜産確立対策事業)を利用し、堆肥舎を昨年三月に完成させました。

 山村さんの住む北軽井沢地域は目の前に雄大な浅間山が見える標高千百五十メートルの高地。近くには別荘地があります。山村さんは、環境にやさしい酪農をと考え、堆肥舎を作りました。補助金で作ったとはいえ、いまでも苦しい酪農経営の中で、少しでも経費を切りつめなければやっていけない状況。酪農を続けたいという思いで作った堆肥舎が家屋とされ、千七百万円と評価されて六十八万六千六百円の不動産取得税を支払わされました。

 「西武ドームが家屋かどうかの認定によって税額が何百倍も違うという新聞記事をたまたま読みました。堆肥舎が家屋でなければ償却資産の扱いになり、高額な税金を払わなくてもよいと思った」と語る山村さん。

 昨年十月十六日、家畜排泄物の堆肥化施設等に対する固定資産税の特例(平成十一年十一月から平成十六三月三十一日までの間に取得した施設は五年間課税標準が二分の一)を認めるよう審査請求をしました。

 山村さんは「ガラス戸もなく、一・八メートルの高さの塀が一辺にあるだけなのに、なぜ家屋とするのか。その理由を説明するように主張していますが、知事側は“関知しない”“不知”とまともな答えをしません」と不誠実な県側の態度に対して最後までたたかい、要求を実現させる固い決意です。

 町には五十軒の酪農家がいます。すでに二十軒の酪農家が処理施設を作っており、山村さんのたたかいは注目されています。

 畜全協の住谷会長は「全国の畜産農家は家畜排泄物処理法で義務づけられた処理施設を作るために大きな負担を強いられている。そのうえ税攻勢をかけられたら、まさに畜産をやめろというに等しい。私たちは、山村さんのたたかいを支援していきます」と語っています。


償却資産が“当たり前”

北海道

 北海道白糠町では、酪農家の糞尿処理施設について償却資産としています。税務担当者によると「(家畜排泄物処理法にもとづく)糞尿処理施設についてこの三年の間、三十件扱いましたが、すべて償却資産としています。他の市町村のことは知りませんが、白糠町では、これまでは個人の酪農家の糞尿処理施設を家屋としては扱っていません」と話しています。

 北海道農民連の野呂光夫書記長は「北海道では、白糠町のようにほとんどの市町村が堆肥舎などの処理施設を家屋とみなしていません。それが当たり前となっている」と語っています。

(新聞「農民」2003.4.21付)
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2003年4月

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