輸入米が姿を変えてあなたの口へ(2/2)伝統的な日本の味 危機/輸入米が姿を変えてあなたの口へ(2/2)
和菓子輸入の米粉調製品も大福餅や柏餅、ういろう、落雁、おはぎ、桜餅――といった、和菓子。この業界にも外国産米は流れています。「本当は国内産の米でつくって、いい和菓子を消費者に食べてもらうというのが原則で、国内産オンリーで超高級品というのもあります。だけど消費者にとっては価格の問題があるので……」 全国穀類工業協同組合の専務理事、渡部五十八さんも、残念そうです。 この組合は、国内産米も外国産米も砕米で買って米粉にする第一次加工業者の集まりです。組合員は百五十人。砕米を米粉にして、菓子原材料の卸問屋に売り、そこから和菓子メーカーへいきます。組合だけで米粉の七割を扱っています。 国内産米の年間使用量はもち米、うるち米合わせて三万トン。外国産米は、食糧庁の販売実績では七万トンですが、こちらの方は玄米換算した数字です。実際に買い入れるのは砕米だから、そこまではいきません。「外国産米の方が、ちょっと多いかな。計画外流通米のくず米とかを入れると、国産の方が多いかもしれない」と渡部さん。 MA米だけでなく、輸入の米粉調製品も和菓子メーカーが直接買って、若干使われているといいます。 「MA米が入る前も米粉調製品は使っていました。それに、平成五年(一九九三年)の大不作のとき、使える米がなくて、末端のメーカーではどうしても米粉調製品を使わざるを得なくなり、そのための機械を設備した。だから米が入るようになっても調製品を使い、もう戻ってこなくなったという側面もある」
パンメーカーも製造・販売いまでは山崎パンや第一パン、キムラヤなど大手のパンメーカーが和菓子をつくって売るようになっています。これらのパンメーカーに外国産米が入っているのかどうか、食糧庁は明かそうとしません。 それに、餅やだんごといった製品の形での輸入品も入ってきています。 「和菓子だから需要がなくなるということはないだろうが、何とかして魅力あるものにしていきたい。日本の農業がつぶれたら、われわれ加工業者もやっていけない。昔のように農民のみなさんと一緒につくれたらいいのですが」 渡部さんたちのいつわりのない思いです。
せんべい中国製品は倍々で増加せんべいやあられのメーカー団体、全国米菓工業組合の組合員は、約六百二十企業。「ピーク時は二千企業ほどだったんですが、跡継ぎがいないうえにいまの景気で、廃業者が出て、毎年減っていきます。組合の中には亀田製菓のような大手もあれば、店先で焼いて売っている組合員もいる」と、専務理事の今井教夫さん。食糧庁の玄米換算で示されたデータでは、外国産米の買入量は四万トンとなっていますが、「14米穀年度のMA米買入実績は、破砕米で買っていますから三万一千トン」だといいます。 原料米の使用量はせんべい、あられで合わせて年間二十万トン。 せんべいは特定米穀、加工米、MA米を使っています。米粉調製品を使っているところもあります。だけど「メーカーが直接購入しているため、どこで、どれだけ使っているかは分からない。米粉調製品は、機械装置を持っていないと使えないので、組合員六百二十企業のうち、使えるところは限られている」と今井さん。 あられは、原料代が高く、コストの三割くらいを占めています。ほとんどが自主流通米を使っていて、くず米や輸入米はわずかです。ただ「製品の値段によっては、米粉調製品は入っているだろう」といいます。 せんべい、あられは、組合傘下のメーカーだけで九割のシェアを持ちます。このうち大手五社くらいで、全体の半分は占めています。 今井さんはいいます。 「同じ業界だけでなく、ビスケットやスナックとも競争していかなければならない。だからいまの業界は、国内産米を大事にして高級化して差別化していこうという業者と、安値を追求する業者に二極化しつつある。消費者が価格差を認めてくれればいいが、入ってくる中国の製品は倍々でふえている。百円ショップに出回るようになると、国内産の原料はもう使えなくなる」 コスト競争があおられ、農業が立ち行かなくなれば、伝統的な日本の味もまた、危機に直面せざるをえなくなります。
味 噌食糧庁がMA米三万トン(玄米換算)を販売している全国味噌工業協同組合連合会には、全国八ブロック五十一組合約千四百企業が参加しています。みそ健康づくり委員会のホームページによると、みその主材料は大豆と、米あるいは麦、そして塩と水。みそには米みそ、麦みそ、豆みそおよび調合みそがあって、みそ造りに不可欠な麹の原料を冠してつけられた名前だといいます。 このなかの「みそQ&A」では、輸入米の使用について次のように答えています。 「みそ造りに用いられる米の使用量は約10万トン強で推移しています。従来は、主に国内産の水稲粳米(うるちまい)が用いられました。最近では、原料事情による政府の方針で、一般的には輸入米が割り当てられています。しかし、国産米だけを使用しているメーカーもたくさんあります」
(新聞「農民」2003.4.14付)
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[2003年4月]
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