WTO交渉決裂今こそ政府はミニマム・アクセス廃止を要求せよ
三月三十一日に妥結するはずだったWTO農業交渉は、何の結論も出せないまま決裂しました。ハービンソン農業交渉議長は新たな交渉期限を示すこともできませんでしたが、これは「新たに示した期限を守れなかった場合、影響がさらに深刻化する」ため。 オーストラリアの新聞「ウィークリータイムス」は、交渉が「メルトダウン」(炉心溶解)状態になったと書いていますが、その原因は、アメリカやオーストラリアなどが、農業と工業の違いを無視して、農産物輸入の完全自由化を求めたことにあります。また、本来“行司”役を務めるべき農業交渉議長が、輸出国べったりの裁定案を示しEU(ヨーロッパ連合)や日本など多くの加盟国の反発を買ったことも決裂の直接の要因です。 アメリカは、自らは二〇〇二年農業法で価格保障を復活してダンピング輸出の継続と自国農業保護に乗り出す一方、日本を含む他国には、完全自由化と価格保障など農業保護の削減を要求するという横暴な態度をとっています。これは、国連を完全に無視してイラク攻撃に乗り出すという無法ぶりと同根です。 WTO事務局は「決裂は農業ばかりではない。ウルグアイ・ラウンドも予定を何年もオーバーした」と平静を装っているといいますが、交渉は「寝たきり状態」というのが実際のところ。 (1)農業交渉は三月三十一日合意、(2)九月に開かれる閣僚会議で全体を合意し、(3)〇四年中に各国の約束表にもとづく交渉を行って、(4)〇五年一月一日から新WTO協定がスタート──これが〇一年の閣僚会議で決められたスケジュールでした。 WTO交渉団の間では「二〇〇七年決着」説がささやかれています。その根拠は、アメリカ大統領選挙が〇四年に行われることと、「ファスト・トラック」(アメリカ議会が大統領に与えた外交交渉権限)の期限が〇七年まで延長可能なこと。 ここでもアメリカの横暴勝手に左右されるというのは腹立たしいかぎりですが、農業つぶしの合意はないほうがマシ。 同時に“六月の先進国サミットで交渉が動き出す”ともいわれています。 日本政府に対し(1)農業交渉議長案を完全に否定せず、「触媒」の役割を果たしうる(川口外相)などというあいまいな態度をとるのをやめること、(2)WTOで初めて押しつけられたミニマム・アクセス(要りもしない外米の押し売り)の大幅削減と廃止を求めることを強く要求しましょう。
(新聞「農民」2003.4.14付)
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[2003年4月]
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