「農民」記事データベース20030407-581-01

「あきたこまちとは別物」と農家も指摘

USAライス連合会と木徳が輸入攻勢

“顔の見える米”を届けて、押し返そう


 「USAライス連合会」が、国内最大手の米卸、木徳神糧と組んで、「カリフォルニア産アキタコマチ」を売り出しました。

 「USAライス連合会」は、食管法時代の九一年にアメリカ産米を不法に展示して告訴されたアメリカの業界団体。木徳は、大手商社なみに外米を輸入しながら(〇二年度のSBS米の輸入実績は約二千四百トン)、昨年十二月には「新潟コシ」に未検査米を混入して摘発された米卸。いわば“前科者”どうしが、アメリカ米の売り込みを強めている背景は、WTO交渉での関税引き下げを見越してのこと。

 米屋を抱き込み、外米販売ねらう

 「USAライス連合会」は二月末、首都圏を中心に四十四店の米屋さんを組織する「アメリカ米ライスショップ・ネットワーク」を立ち上げました。米屋さんを窓口に「カリフォルニア産アキタコマチ」を売り込もうというのです。

 なぜ米屋さんが…?

 その答は、同ネットワークに参加する米屋さんに直接話を聞いて、おおよそ分かりました(USAライス連合会は、新聞「農民」の取材を拒否)。

 ある米屋さんは本音をこう語ります。「正直言って、木徳の営業マンから頼まれて名前を貸しただけ。売る気はないので、すでに店頭から撤去している。顔が見える米を販売して、国内の農家を守っていくことが、うちの路線ですから」。

 また、別の米屋さんも「店内でプロモーションビデオを流し始めて二週間になるけど、お客さんの反応はなく、買った人もいない。頼まれたから置いているけど、キャンペーンが終わったら、これをどうするつもりなのか」と首を傾げます。

 業界最大手の木徳に「おつきあい」したというのが実態のようです。

 仕掛けたのは、輸入米を手広く扱う木徳

 その木徳は、九六年にカリフォルニアに現地法人「キトク・アメリカ」を設立。同州の生産者と契約を結び、「あきたこまち」を栽培して、日本に輸入しています。

 さらに、ベトナムやタイにも進出している同社は、ホームページで「コメ・ビジネスをワールドワイドに展開します」と誇示しています。

 木徳は、九五年にSBS米の輸入業務を行う「商社資格」を取得。その後の七年間で、少なく見積もっても一万七千トンを超えるSBS米を輸入しています(表)。しかし、「アメリカ米」などとして売った形跡はほとんどなし。今まで国産米にブレンドして売りさばいていたのが、昨年十二月のニセ表示摘発で、あわてて「アメリカ米」として売り出したのかと勘ぐりたくもなります。
木徳のSBS米の輸入実績(t)
95年度
255
96年度
不明
97年度
1400
98年度
3080
99年度
4506
00年度
2356
01年度
3586
02年度
2398
※『食糧ジャーナル』「商経アドバイス」「米麦日報」などをもとに作成。業者ごとの輸入量 が公表されていない入札は除外

 品質二の次、販促熱心な“USAライス流”

 USAライス連合会のスチュアート・プロクター会長は都内で記者会見し、「(アメリカ産米が)日本と同じ高品質の米であることを啓もうしていく」と厚かましく語りました。しかし、その米は青未熟粒が多く、農家や、米を扱う人が見れば一目でわかる粗悪品。

 農民連が独自に、カリフォルニア産アキタコマチを手に入れて調べたところ、水分は一二%台、整粒歩合は三等相当という結果が出ました。

 秋田県雄勝町の渡辺重博さん(63)も、「これは、おらほうの『あきたこまち』とはまったく別物だ」といいます。渡辺さんは、かつて“米作日本一”にも輝いた篤農家です。

 米の品質はそっちのけで、ビデオを作り、新聞折り込み用のチラシも提供するなど、PRだけは異常に熱心なのが“USAライス流”です。

 米価暴落に苦しむ農家の思いを踏みにじる

 カリフォルニア産アキタコマチの店頭価格は、五キロ千六百〜千八百円台で、話題性以外にほとんど競争力はありません。しかし、WTO交渉でアメリカなどが要求する関税の大幅引き下げが実現すれば、国産米をずっと下回る価格になると踏んでいるのです。

 「アメリカの圧力を押し返さなければ、日本の農業は吹っ飛んでしまう」と危機感を募らせる秋田県農協中央会の木村一男副会長。今回のカリフォルニア産アキタコマチの売り込みは、こうした産地の思いを土足で踏みにじるものです。

 国産のお米を届けて世論と運動を広げよう

 一方、アメリカ米の不人気は当事者自身が認めていること。USAライス連合会日本代表事務所の里見泰典代表は、「主食用向けの米国産米は厳しい状況だ。一時、国内に二千店の取り扱い店舗があったが、二百〜三百店に減った」(「日本農業新聞」3月20日付)と語っています。

 これは、輸入品の安全性に対する不安とともに、「国産米を守りたい」という世論が広がっているから。

 「私は、日本の農業を守りたいから、地元でとれたお米を食べる。絶対に輸入米は買わないし、まわりの人にもそう訴えている」という、消費者の沼田幸子さん(53)。沼田さんは今年八月に秋田県で開かれる日本母親大会の現地副実行委員長を務めます。

 こういう消費者や、「顔が見えるお米を扱いたい」という米屋さんに、国産の安全で安心、そしておいしいお米を届けて、「輸入米は、食べない、買わない、扱わない」の世論をさらに広げることが求められます。


 坂本進一郎さん(秋田・大潟村、水稲15ヘクタール)

 カリフォルニアの米作りは、数百〜数千ヘクタールの水田を、家屋のような大きさの機械で耕作する。メキシコの季節労働者を使い、米はまるで工業製品と同じ扱いだ。こういうものを無理やり輸入させ、歴史と文化を形作ってきた農業をつぶすWTO協定は許せない。


 秋田おばこ農協・渋川喜一組合長

 秋田おばこ農協は、単協としては米の出荷量日本一。再来年度から、生産者ごと、品種ごと、等級ごとにバラ出荷を始めて、消費者の要望に応えていく。

 政府が、アメリカでもあきたこまちの栽培を野放しにしているのは許せない。日本の食料自給率が最低水準なのを何と考えているのか、と言いたい。

(新聞「農民」2003.4.7付)
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2003年4月

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