土作りと有機物の使い方(4)涌井 義郎
窒素固定菌を活用するマメ科作物と共生する根粒菌が窒素固定することはよく知られています。ダイズ、落花生、クローバ(飼料作物)などを輪作・間作すると、地力を高めます。その際、収穫後の茎葉を畑にすき込むか、堆肥化して畑に戻すことが必要です。根粒菌は、化学肥料主体の多肥栽培では窒素固定の働きをせず、良質有機物による地力培養が根粒菌の活性を高めます。窒素固定菌は根粒菌の他に多くの種類が知られています。有機物分解に働く放線菌や細菌の一部は、植物と共生しないで単独で窒素固定します。
細菌ではアゾトバクター、クロストリジウムなどがそうです。これらは土中の有機物からエネルギー源を摂取する「有機栄養細菌」で、光合成能力の高いイネ科作物の根の周囲で大きな働きをします。窒素固定菌は根からの分泌物も利用するのです。 最近の研究によれば、サトウキビが作物体に貯えた窒素の半分近く、サツマイモでは葉中窒素の三〇%近くが窒素固定菌から供給されたものだということです。すなわち、作物が肥料だけで生長したのではなく、窒素固定菌の働きが想像以上に大きなものであることの証明です。 こうした窒素固定菌は、堆肥やボカシ、緑肥などで活性が高まります。したがって、継続的な有機物投入やイネ科・マメ科の輪作導入で、有機物そのものによる地力培養に窒素固定菌の働きがプラスされ、結果的に「施肥量の削減」につながります。前号で紹介したリン溶解菌や、菌根菌による微量要素の有効化などを合わせると、有機物投入と輪作がいかに重要かがわかります。化学肥料を前提にした慣行の農業技術(施肥量計算)を見直す必要があるかもしれません。 水田では光合成細菌とらん藻が窒素固定を行い、これらも堆肥やボカシの施用で働きが高まるとされています。 (鯉渕学園 教授)
(新聞「農民」2003.3.31付)
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[2003年3月]
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