「農民」記事データベース20030331-580-08

遺伝子組み換え食品の国際基準

七月の総会で正式決定

4年の議論終えたコーデックス、バイオテクノロジー特別部会


微生物特許で、伝統的醸造業に打撃の恐れ

 遺伝子組み換え食品の国際的な基準を決める、コーデックス委員会バイオテクノロジー応用食品特別部会が三月十一日から十四日まで、横浜市のパシィフィコ横浜で開かれました。 

 二〇〇〇年三月に千葉県幕張ではじまり、四年間にわたって議論が行なわれてきた特別部会ですが、これですべての遺伝子組み換え食品の議論を終了し、七月に開く総会で正式な国際基準として決定されます。 

 アメリカなど、甘い国際基準押し付けを画策

 コーデックス委員会の決定は、WTO協定によって強制力を持つため、コーデックス基準に従わない場合には、非関税障壁として、貿易相手国からWTOに提訴される可能性があります。

 アメリカ、カナダなどの食料生産・輸出国は、安全性が確保されない遺伝子組み換え食品を世界中に売り込むための、甘い国際基準を各国に押し付けようと画策。これに反対するEUや途上国、NGOと対立してきました。

 微生物の安全性審査に問題も

 今回の特別部会では、納豆、ヨーグルト、チーズなどの発酵食品に使う遺伝子組み換え微生物の安全性評価が議論され、国際基準にまとめられました。発酵食品に使う遺伝子組み換え微生物は、まだ商品化されていませんが、人間が食べた経験のない微生物にまで遺伝子組み換えの対象を広げようとするもので、安全性審査についても大きな問題があります。

 微生物は、植物と比べても極めて早い速度で増殖するため、生きたまま人間の消化器官に取り込まれると、導入した遺伝子が腸内細菌に移行して定着する危険性があります。ベロ毒素発生遺伝子によって病原化したO‐157のようなことも起こりかねません。 

 しかし、微生物の安全性審査は、植物の安全性ガイドラインをそのまま基礎にしており、急性毒性試験だけで第三者試験も行わないなど、微生物と植物との違いを軽視した、不十分なものです。

 論議では、遺伝子汚染などの「予期せぬ非意図的影響」の発生が指摘されましたが、それに対する安全策は盛り込まれませんでした。また、開発企業が今後、組み換え微生物に生物特許料をかけてくることも予想され、みそ、醤油、酒など、日本の伝統的醸造業に大きな脅威となりうる問題を残しています。

◇  ◇

 「遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーン」、消費者連盟、生協、全国食健連、農民連など、六十三の消費者、生産者団体は、厳しい安全基準や表示を要求してコーデックスNGO行動を展開しました。

 開会日の十一日には、横浜の会場前でアピール行動。十四日は、衆院第一議員会館で院内集会を開き、農水省、環境省に対し、(1)遺伝子組み換え稲の開発中止、(2)組み換え大豆の国内作付け中止、(3)厳しい表示制度の実現、(4)コーデックス委員会を市民のものに、と交渉。この後、日本モンサント社へ申し入れを行いました。

 十五日には、コーデックス会議に参加した海外NGOも交えて都内で報告集会を開き、コーデックス四年間の総括を行ったほか、組み換え食品を食べない、作らない運動をいっそう広げていくことを申しあわせました。

(塚平 広志)

(新聞「農民」2003.3.31付)
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2003年3月

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