土作りと有機物の使い方(3)涌井 義郎
有機物分解菌は働き者土に有機物を投入すると、有機物からにじみ出る糖やアミノ酸、塩類などの水溶性成分をエサにする「非分解菌」と、セルロースやリグニンなどをエサにする「有機物分解菌」がそれぞれ増殖します。互いに好みのエサがなくなると、死んで他の微生物のエサとなるほか、無機化して作物の栄養となります。有機物分解菌には、ワラや堆肥の分解のほか、病原菌(多くは非分解菌)を溶かしたり、フェノール類などの有機物分解中に発生する有害物質を分解消去するなどの働きがあります。 堆肥を作る過程では、有機物が密に堆積するため、微生物が大量に増殖し、その分解活動によって大きなエネルギーが発生します。これが発酵熱で、堆肥の中心部では七〇〜七五℃にもなります。発酵熱には病原菌や雑草種子を死滅させ、有害物質を急速に分解する効果があり、こうした効果を発揮させるには、堆肥の切り返し作業が重要です。
有機物分解菌の中にはリン溶解菌などもあります。この菌が有機物を分解する際に出す有機酸は、鉄などと結合したリン酸を切り離して可溶性にするため、リン酸の効きが良くなります。 有機物分解菌の多くは病原菌を排除する「拮抗菌」としても働きます。抗菌物質を作るバチルス(納豆菌や枯草菌)、ペニシリウム(アオカビ)、リゾープス、乳酸菌、こうじ菌、酵母、放線菌などです。 落ち葉の下やミミズの糞に多く増殖する放線菌は、キチナーゼという分解酵素を分泌して病原菌を溶かします。したがって、体にキチンを含む昆虫やミミズの増殖は放線菌を増やし、土の健康維持につながります。 良質の堆肥や発酵有機質肥料(ボカシ)は、土壌の理化学性を改良するだけでなく、働き者の有用微生物を畑にたくさん持ち込むことになります。 こうした有用微生物は、通常の堆肥で増殖させることができますが、家畜糞だけでは良くないようです。繊維質が多いワラや落ち葉を混ぜて、微生物のエネルギー源となる炭素を供給してやります。 (鯉渕学園 教授)
(新聞「農民」2003.3.24付)
|
[2003年3月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2003, 農民運動全国連合会