「農民」記事データベース20030324-579-01

「作る顔が見えるお米」でがんばる米屋さんを応援

関連/「お米の販売に役立てて」


 「キーワードは、やっぱり“作る人の顔が見えるお米”」。――国内最大手の米卸、木徳神糧が未検査米を「新潟コシ」と偽って販売し、福島県の業者が輸入米を国産米に偽装するなど、安売り競争のもとで相次ぐ不祥事。そんな中で、本物のお米の味にこだわり、消費者との信頼を第一に考える街の米屋さんが元気を取り戻しつつあります。

 産地と米屋、消費者のきずな

 そうした動きに一役買っているのが、農民連の準産直米のとりくみ。米卸と提携して“作る人の顔が見えるお米”を米屋さんや消費者に届けようというものです。これに新たに産直「こだわり米」が加わりました。

 「こだわり米」は、準産直米のうち、アイガモ米や無農薬米など、栽培にこだわっているお米。これらを、米卸を通じて米屋さんに販売するのは一般の準産直米と同じ。注文や代金の決済も米卸を経由しますが、お米は一俵(60キロ)単位で産地から直接、米屋さんに届きます。

 普通、米卸と産地の取引は十トン(約百六十俵)単位。これに対して、米屋さんは、数量が限定される「こだわり米」を容易に扱うことができ、米卸も余計なストックを持たずに済みます。

 そして何より「こだわり米」の大きな特徴は、産地の思いがストレートに伝わり、産地と米屋さん、消費者との間の絆が深まることです。

 ていねいな手紙に「素朴だなあ」と感心
  ―日野・滝瀬商店

 「熊本の川辺川の農家からは丁寧なお礼の手紙をいただき、素朴だなあと感心しました。また、石川の無農薬でがんばっている方は、パソコンで自分の思いを一生懸命伝えてくれます。こういうのがお客さんに紹介するうえで本当に大事なんです」。こう話すのは、東京・日野市の滝瀬商店の社長、滝瀬正幸さん(52)。

 滝瀬商店は、北海道や宮城の準産直米も扱っています。「もっと特徴があるお米も扱いたいと思っていた矢先に、米卸の城南食糧さんから『こだわり米』を紹介されて扱うことにしました」。

 店先で精米し、つきたてのお米を販売する滝瀬商店。正幸さんは、「対話を通じてお客さんが望むものを販売するのが街の米屋。まだまだディスカウント店には負けない」と言い切ります。

 毎日食べるお米は「身土不二」
  ―品川・沖田精米

 東京・品川区の沖田精米も、お米の味にこだわっている米屋さん。落ち着いた雰囲気の店内には、紙袋に入ったお米とともに、総菜や雑穀なども並んでいます。

 「総菜は、うちの米の紹介と、お米料理の提案をかねて始めたんですが、今では売り上げの約半分を占めるまでになりました」と、四代目の沖田公成さん(40)。紙袋を使うのは、通気性をよくしてお米の品質を維持するため。何回も使いまわしがきくので、持参してくれたリピーターのお客さんには、その分、値引きもしています。

 「毎日食べるお米は『身土不二』、つまりその土地で採れたものを食べるのがいい」という公成さん。「そのためにも農家の運動やとりくみが大事ですね」と、産地にエールを送ります。

 日米連の「お米マイスター」

 こうしたがんばる米屋さんを応援する、業界のとりくみも始まりました。日本米穀小売商業組合連合会(日米連)の「お米マイスター」制度がそれ。マイスターに認定されるには、お米に関する幅広い知識とともに、産地の情報を消費者に正しく伝える販売能力も求められます。

 昨年十一月から今年一月にかけて全国四十一会場で講習会と試験が実施され、二月に二千二百六十一人の「お米マイスター」が初めて誕生しました。日野市の滝瀬さんもその一人です。

 仲間を増やして大いに米づくり

 農民連の準産直米は今年、五年目を迎えます。昨年は、東京だけでなく愛知や大阪の米卸も参加し、全国的に広がり始めました。このとりくみは、米を生産から流通まで市場原理にゆだねる小泉流「米改革」や、国民が食べもしない外米を無理やり売りつけるWTO協定への反撃でもあります。

 農民連米対策部の横山昭三事務局長は、「いま最も大事なことは、先行きへの不安と米つぶしへの怒りを高めている農民に、米づくりと準産直米への参加を訴え、仲間を大いに増やすこと。そのうえで、米作りの特色や意気込みがもっと伝わるような工夫をしていこう」と呼びかけています。


「お米の販売に役立てて」

福島県農民連

  福島県農民連は、組合員の生産履歴を、六月からインターネットを通じて公開します。準産直米を扱う米屋さんにはID番号を発行し、アクセスしてもらう予定。

 また、生産者の顔写真と栽培の特徴などを載せたラベルを作り、お米の販売に役立ててもらっています。

(新聞「農民」2003.3.24付)
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2003年3月

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