「農民」記事データベース20030317-578-08

土作りと有機物の使い方(2)

涌井 義郎


土作りは森林に学ぶ

 人が田畑を耕し、作物を栽培しては持ち出すようになって、土は自らの力で活力を貯えることができなくなりました。肥料をやるのはそのためです。

 森林は、耕しませんし肥料もやりませんが、土は衰えもせず少しずつ厚みを増し、発達します。農耕もこの森林のメカニズムに学ぶことが大切です。

 森林が発達するのは、(1)植物根が多く深い、(2)木々の枝葉と落葉が土中生物を攪乱と紫外線から守る、(3)根の分泌物と腐葉からの炭素と窒素が微生物を養う、(4)窒素固定菌が活躍する、ためです。

 森林に特定病虫害が多発しないのは、(1)多様な植物が混ざり合い、(2)多様な小動物と微生物が繁殖して共生し、(3)食物連鎖があるからです。

 こうしたメカニズムを畑に応用すると、少ない肥料で作物を強く健康に育てられるのです。

 
植物の土作り効果
(多種類の植物を輪作、間作する)
植物の種類
土に戻る有機物
土作りの効果など
【イネ科作物】
ムギ類、ソルガム、キビ、トウモロコシ
わら、刈り株、根、もみ殻、ぬか、ふすま 残さ有機物が多く腐植生産力が大きい
微生物エネルギー源
【マメ科作物】
ダイズ、アズキ、落花生、クローバ
茎葉、殻、根 腐植生産
根粒菌の窒素固定
微生物タンパク源
【緑肥作物】
エン麦、ライ麦、ベッチ、ヒマワリ、クロタラリアなど
茎葉、根、刈り株 ミネラルの有機物化
深根の土壌耕耘効果
微生物栄養源
センチュウ忌避、他
【畑地雑草群】
ハコベ、アカザ、ホトケノザなど
茎葉、根 表土被覆で土壌保全
緑肥効果
天敵昆虫の棲息など

 方法は、根をたくさん張る作物を輪作に入れます。トウモロコシ、ソルガム、ムギなどは根量 が多くて、土中にたくさんの有機物を持ち込み、深くまで根が耕します。根の周囲で窒素固定菌が働いて土を肥やします。

 できるだけ耕耘の回数を減らします。耕耘は土中微生物の棲息を攪乱して働きを妨害し、有機物の消耗を早めるのです。

 雑草も畑のフタとして土中微生物を保護し、光合成で炭素を獲得する(微生物のエネルギーとなる)ため、緑肥の代用になり有益です。特に冬の畑はできるだけ裸にしないことが肝要です。

 堆肥と有機質肥料、緑肥などの必要十分量をきちんと補給します。十分な有機物が地力を高め、窒素固定菌を働かせ、有機物分解菌が病原菌と拮抗して畑の健全性に役立ちます。

(鯉渕学園教授)

(新聞「農民」2003.3.17付)
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2003年3月

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