「農民」記事データベース20030303-576-16

21世紀への挑戦

誰でもできる無農薬・有機稲作(12)―最終回―

稲葉 光國


無農薬・有機水田の環境創造機能とWTO体制

 十一回にわたり連載してきた無農薬・有機稲作は、単に安全で栄養価の高いお米を生産するだけでなく、水田の多面的機能を飛躍的に高めるための農法として発展させることが大切です。

 かつてどこでも見られたメダカやドジョウ、小鮒、ホタル、ナマズ、サギ、ツバメ、トキ、コウノトリといった農村の多様な生きものたちが減少し、あるいは絶滅の危機に瀕しています。

 無農薬・有機栽培にすることでユスリカが増え蚊柱を作るために、ツバメがたくさん飛来するようになってきます。二〜三年経つとドジョウが田んぼで大量に繁殖し、また、ヤゴの一斉羽化が観察されるようになります。田んぼのなかに通年型のビオトープを生産調整を兼ねて作ってやるとメダカが発生し、ビオトープの作り方によってはカワニラ、そしてホタルも発生するようになってきます。

 ヨーロッパの国々、特にドイツや、お隣の韓国では、こうした農業のもつ環境創造機能を維持するために農家に直接所得保障を行ったり、農法転換の助成を積極的に行ったりしながらWTO体制に対抗する努力をしています。遅まきながら我が国でも、環境省などが水田を湿地環境と位置づけて、環境保全型稲作にエールを送るようになってきました。

 新潟県の佐渡島では、トキの野生復帰をめざす農業者の会を中心に、島ぐるみの取り組みが始まっています。ここでは、無農薬・有機稲作を中心に、環境を創造する可能性のあるさまざまな農法の実践者が幅広いネットワークを組み、お互いに技術の交流を進めつつあります。

 こうした地道な技術改善運動と地産地消の取り組みが「WTO体制」を打破する道につながることを強調し、連載を終わります。

(NPO法人民間稲作研究所 代表)

(新聞「農民」2003.3.3付)
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2003年3月

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