21世紀への挑戦誰でもできる無農薬・有機稲作(6)NPO法人民間稲作研究所 代表 稲葉 光國
雑草の発芽生長特性を利用した抑草技術今まで試みられてきた除草剤を使わない抑草法には表のようなものがあります。
動物を活用する方法や物理的方法は充分知られた方法ですからここでは触れませんが、ジャンボタニシを活用する方法は生態系を乱し、慣行栽培農家に迷惑をかける恐れがあります。既に生息している地域以外では絶対に実施しないで下さい。 これから述べる最も低コストで自然の営みを活用した耕種的抑草法は単に抑草だけではなく、肥培管理を兼ねていることが大きな特徴です。 耕種的抑草法のトップに記した深水管理法は、ヒエなどの湿生雑草に完璧な抑草効果をもっています。ヒエの種子が散乱している水田でも初年度から抑制できます。その方法は、田植え直後から八センチ以上の水位を三十日以上保ち続けることです。一日でも水がなくなったりすると効果はなくなります。絶対に水位を落とさないよう水管理を徹底して下さい。 発芽するヒエも少しありますが、水のなかで発芽したヒエは根を一センチ程度しか出しません。茎葉を伸ばしてくると浮力がつきますので、田植後二十五日目ころに浮力に抗しきれず一斉に抜けて流れてしまいます。 堆肥などが投入され水が濁る水田や、田植え後十五日頃から田んぼ全面をウキクサが覆うような水田、緑肥などがすき込まれている水田、トロトロ層が形成されている水田などではコナギなどの水生雑草も抑えられるため、深水管理だけで抑草が可能です。しかし、除草剤の使用を中止したばかりの水田でこうした条件を満たさない場合には、コナギが田んぼの全面を覆い大減収になりますので十分注意して下さい。 深水管理で湿生雑草のヒエを防除し、コナギなどの水生雑草には他の抑草法を利用する。深水管理と他の抑草法とを組み合わせて防除するのが耕種的抑草法を成功させるポイントです。
(NPO法人民間稲作研究所 代表)
読者からのご意見について新聞「農民」編集部現在連載している「21世紀への挑戦 誰でもできる無農薬・有機稲作」について、読者の方から「農民連が推奨する技術なのか」との問い合わせがありましたので、それにお答えします。農民連は、どれか一つの技術を絶対視して、推奨するような立場はとっていませんし、新聞「農民」も、この立場で編集しています。 亜熱帯から亜寒帯まで含む日本列島では、その地域ごとに気候や風土、歴史に根ざした農業技術が存在します。そういう現実を無視して特定の技術を推奨したり、自分の技術をもって他の技術を排除したりすることは生産を発展させるうえで大きな間違いです。同時に「他の技術も知りたい。そうして自らの技術を向上させたい」というのも、ものを作る農民にとって当たり前の要求であり、各地で技術改善の努力が続けられています。 新聞「農民」は、こうした読者からの要望にもとづいて農業技術の紹介と交流を行ってきました。この立場は今回の連載でも共通しています。 新聞「農民」編集部では引き続き、読者のみなさんの要望に応えてよりよい紙面づくりに努力していきますので、今後ともご理解とご鞭撻(べんたつ)をお願いします。
(新聞「農民」2003.1.13・20付)
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[2003年1月]
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