「農民」記事データベース20030106-569-09

作る喜び 売る喜び

農民連青年部長 菅井巌さん

ガーデンメッセ千住店 農民連「産直ひろば」の店長 塚越正博さん

 東京・足立区の京成千住駅前の「ガーデンメッセ千住店」に農民連の産直ひろば(直売所)が誕生して、消費者からも大変喜ばれています。毎日午前十時から午後八時まで開店している産直ひろばで、店長として奮闘している塚越正博さん。二十六歳の東京都の出身です。

 農民連青年部長の菅井巌さんが産直ひろばを訪ねて、作る喜び、売る喜びについて大いに語り合いました。


 安全な国産を求める消費者

 菅井 私は、山形県鶴岡市で三町歩の田んぼで米作りとともに、地元の特産だだちゃ豆、「スーパスイートきぼう」(トウモロコシ)を作っています。塚越さんは、ここに来られる前は何の仕事をされていたのですか。

 塚越 ファーストフードなどでフリーターとして働いていました。

 菅井 昨年十月一日に「産直ひろば」がスタートしたんですね。

 塚越 そうです。当初は、野菜だけ。この近所にはスーパーがないんで、あれもほしい、これもほしいと要望され、加工品も扱うようになり、売り場面積も二倍になっていますね。

 菅井 売り方が上手ですが、どこで身に付けたのですか。

 塚越 もともと人と接するのが好きな性格ですから、お客さんとの応対は苦になりません。お客さんは「スーパーで買うよりも全然ものがいい」と言います。現に大手スーパーで働いている人も、ここのものがいいと買いにきてくれます。それに加工品の原料も国産だから安心できるといいますね。

 菅井 販売するうえで、産地に要望したいことなど、何かありますか。

 塚越 出荷するだけではなくて、生産者からの荷物と一緒に一言、料理の仕方や特徴の説明をつけてくれるといいですね。変わったものを出荷する場合はレシピも一緒につけてほしい。レシピを頭にいれておけば、それで売り込みもできます。

 あまり知られていないものでも試食を出すと、買ってくれます。たとえば一日に一個か二個ほど売れればいいかと思っていたズイキが、二日で三十個も売れました。スタッフのお母さんたちが、すごく料理を知っていて、どんなものでもおいしく試食用に作ってくれるんです。

 輸入農産物には負けられない

 塚越 私は生産者が誰かわかってますし、商品を買ってくれたお客さんから、おいしかったよ、まずかったよと言われれば、生産者に伝えられます。今、営業が終わったあと、売れた商品や金額、何が売れ筋かを生産者にメールで送っている。そこに一言つけたして、「これが人気商品」とか、「これをスタッフのみなさんが頑張って売ってくれた」とか、簡単な一言をつけています。メールを毎日みているところは、出荷のタイミングも量もきちんと合わせてくれます。メールをみないところは、何も考えずに機械的に送ってきます。結局、売れ残って、腐って捨ててしまうことになります。

 菅井 もったいない。

 塚越 要望ですが、スーパーと違って、農民連組織の直売所であるなら、生産者や事務局の人たちも、もうちょっとビジネス感覚をもって、しっかりと連絡をとりあってやってもらいたいんです。

 菅井 お客さんの反応をみていても、国産で安全なものを食べたいという要求を実感します。外国からの輸入ものを跳ね返すためにも、こういった売り場はますます大切だと思います。

 塚越 お客さんも安心して買ってくれます。お肉と魚の販売は少し難しいんですが、それでも干物などを出せる産地には声をかけています。なんとか置きたい。

 菅井 顔が見えて、消費者においしいといわれるのが私たち生産者にとって一番うれしいことです。

 塚越 売る方の私たちも、お客さんから「おいしかった」といわれることがうれしいことです。さらに生産者からも「頑張って出荷します」といわれると励みになります。

 主食のお米を守ろう

 菅井 「お米はお茶碗一杯当たり五十八円」と言われていますね。缶コーヒーは一缶百二十円でしょう。それからみればお米の一杯は安いものですね。お米の売り方も非常に工夫されているなと感じました。

 塚越 初めてお米を買うお客さんは二キロ袋を買っていく人が多い。その後、「おいしかった」と五キロ、十キロと買っていってくれます。

 菅井 農水省と米の問題で交渉したら、農水省の担当者は「消費者ニーズにあわせたお米を作ってほしい」といいます。「消費者ニーズは何か」と問うと、安いことだという。安ければ安いほどいいのか。日本の農業がつぶれてもいいと思っているのかと追及した。

 減反で九十アールほどに飼料用米を作っています。食べられる米なんですが、粉砕して飼料用米にします。主食用の玄米一キロは、生産者価格では二百五十円〜三百円ですが、飼料用だと一キロ三十円で、べらぼうに安い。非常に腹立たしい思いをしています。

 いま政府は主食・米の責任を放棄しようとしており、許せません。

 塚越 お米は安ければいいということではなく、おいしければいいですという人が多いですね。

 菅井 私たちと産直をしている保育園の先生や保護者の人たちは「日本の食糧を守るために後押しをします。頑張ってください」と励ましてくれます。労働者は不況やリストラなどでふところ具合も寂しくなっています。でも、「みなさんからお米が来なくなるのが一番怖い」といいます。そういうお米を守ろうという消費者との運動も生まれています。

 今後の抱負は

 菅井 塚越さんは、店長として三カ月ほどになりますが、いまどんな思いを持っていますか。

 塚越 生産者は、本当に一生懸命に作っていることがわかるんです。だから私は、売り上げを伸ばすことに一生懸命です。母親の実家が農業をやっているので、ちょっとは農業をわかっているつもりです。

 菅井 何を作っているのですか。

 塚越 群馬ですが、ほとんどネギです。おじいちゃんが元気だったときには大和芋も作っていました。

 菅井 農民連に入ってもらって、ここに出荷したらどうですか。

 塚越 跡取がいないんで作れないですね。

 菅井 私も農家の跡取で、学校を出てから四年ほど地元の会社で働きました。勤めていたときには、農業の手伝いはほとんどしませんでした。

 米づくり一年目に稲を全部倒してしまう失敗をし、すごく品質が悪くなったという思い出があります。今でもつらいこともたくさんありますが、稲を収穫したときが一番うれしいですね。

 塚越 「国産野菜は安全でおいしい」のブランドイメージがまだ足りないですね。だから、低農薬、省農薬で作っていることを宣伝していきたい。そして、農民連の主張もお客さんに伝えていきたい。農民連のブランドを大いに広め、早く二店目をつくりたい。

 菅井 農家の人たちに農業をあきらめずに頑張って作り続けるように、今後も働きかけていきたい。今年は自分で作っただだちゃ豆をぜひ、産直ひろばに出荷したい。同時に、「ライフエリアを守る」ためにも、地元に根づいたもの作りを続けていきたいと思っています。

(新聞「農民」2003.1.6付)
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2003年1月

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