「農民」記事データベース20021216-567-06

21世紀への挑戦

誰でもできる無農薬・有機稲作(4)

NPO法人民間稲作研究所 代表 稲葉 光國


自前でつくる低コストの有機肥料

 有機栽培というと化学肥料を高価な有機質肥料に変えただけ、という人が結構多くいます。高い肥料を入れて味を良くしたから高く売らなければペイしないということで、特別価格を望むことになりますが、これでは二十一世紀の時代的要請に応えた価値ある有機栽培とは言えません。

 資源の枯渇する時代、地球環境の破壊からの脱出という二十一世紀の大きなテーマを考え、経営を安定させるためには、農場や農場周辺で手に入る身近で安価な有機資材を使って、前回触れたボカシ肥とか発酵肥料と呼ばれる有機肥料を自前でつくることが大切です。

 循環型といわれる有機農業の中心技術の一つがこうした自前の有機肥料の生産技術です。

 その標準的な作成方法はごく簡単です。ミネラルがバランス良く含まれ、微生物の餌として最も優れたコメヌカ二十キロ、粉砕したクズ米二十キロ、たんぱくの多い粉砕したクズ大豆十キロ、モミガラ十キロに、産業廃棄物になってしまったオカラを水分調整を兼ねて四十キロ前後入れて五〇%に水分を調整して下さい。好温菌が付着しているカニガラを一〜二キロ入れれば申し分ありません。これで約百キロの発酵肥料ができます。いずれも今まで処分に困っていた資材ですから、コストは人件費と撹拌機の減価償却費、電気料が主な経費になります。クズ米やクズ大豆の粉砕には、使えなくなったもみすり機を調達し、ローラーのゴムを削って鉄の芯を剥き出しにして使うと便利です。

 その他、油粕・漁粕・焼き鶏糞・骨粉など身近に手に入る比較的たんぱくの多い資材であれば何でもかまいません。それぞれの経営や地域に合わせて材料を調達するのが循環型有機農業の基本です。要はたんぱくの塊と言われる微生物の体内成分(たんぱく約三〇%)に近い材料を揃え、水分を五〇%にしておくことです。雨が当ると水分が多くなって腐敗菌が繁殖しますから注意して下さい。直射日光も微生物は嫌います。日の当らない納屋の軒下や北側の下屋などで一メートル以上の高さに積んで発酵させて下さい。

(NPO法人民間稲作研究所 代表)

(新聞「農民」2002.12.16付)
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2002年12月

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