「農民」記事データベース20021216-567-02

声明

「米政策改革大綱」の撤回を強く要求する

二〇〇二年十二月三日 農民運動全国連合会


 政府・農水省は十二月三日、「米政策改革大綱」と「各関連施策の具体的内容」を決定した。これは、主食・米の供給と価格の安定に対する政府の責任を全面的に放棄し、日本を「米を作らない国」にすることをねらったものであり、「競争力のない産業は撤退してもらう」という小泉「改革」の一環である。農民連は、こういう凶暴で冷酷な政策の撤回を強く要求するとともに、食糧法改悪など「大綱」の具体化に反対してねばり強くたたかうことを宣言する。

 「大綱」は空とぼけているが、米をめぐる危機的状況が歴代自民党政権の政策の結果であることは、昨年までの政府自身の言明や「生産調整研究会」の議論から明白である。いま、農民と国民が切実に求めているのは、暴落した米価の回復やミニマム・アクセス米輸入の中止、転作条件の抜本的な充実による食料自給率の向上など、破たんした政策の根本的な転換である。しかし「大綱」は、これにまったく逆行している。

 国民の主食・米に対する全面的な責任放棄は許されない

 第一に「大綱」は、「米過剰」をもたらした元凶であるミニマム・アクセス米輸入の削減・廃止には一言も触れず、もっぱら日本の農民に減反を強要して、百二十万ヘクタールとも百五十万ヘクタールともいわれる大幅な減反拡大を農民の負担でこなす「本来あるべき姿」を二〇一〇(平成二十二)年までに実現することをねらって、年限を区切って政府が撤退しようともくろんでいる。大商社・大スーパーなどに米の流通を支配させるための「流通制度改革」とともに、国民の主食・米に対する全面的な責任放棄は許されない。

 転作奨励金と稲作経営安定対策を廃止し、予算の大幅削減をねらう

 第二に「大綱」は、転作奨励金や稲作経営安定対策など、これまで政府がさんざん切り刻んできた転作条件整備策や最小限の価格対策を冷酷に廃止し、かわりに「産地づくり推進交付金」制度なるものをつくろうとしている。「水田農業の産地づくりを進める対策と米価下落対策を柔軟に実施する」などという触れ込みの同交付金制度の正体は、現在の転作奨励金と稲経対策を合わせて一本にし、予算を大幅に削りこむことをねらったものにすぎない。「米価下落対策」なるものも、農民の負担は二倍にする一方、補てんは八〜九割から五割強に切り下げるものであり、現在の稲経の大改悪以外のなにものでもない。

 米価暴落を転作奨励金と稲経補てん金でかろうじてしのいでいる多くの稲作農民にとって、重大な打撃になることは明白である。

 価格保障の息の根を止める短期融資制度と備蓄米入札

 第三に「大綱」は、稲経廃止に加えて、価格保障の息の根を止める二つの措置をもりこんでいる。一つは「過剰米短期融資制度」であるが、これは「過剰米」を輸入米原価水準の一俵(六十キロ)三千円で買いたたくことを奨励するものである。農協系統などの強い反発で、「各関連施策の具体的内容」では「三千円」を明記することを避けたが、そのねらいは変わっていない。もう一つは、政府による備蓄用買入価格を「入札」によって決めることを通じて、「再生産の確保を旨」として米価を決めるという規定を食糧法から抹殺することである。アメリカが今年五月に価格保障制度を完全に復活させ、アジアの国々が乏しい財源のもとでも価格保障を充実させている一方で、自民党政府は日本を完全に価格保障のない国にしようとしているのである。

 ドロ船の「保険制度」で、農民を“リストラ”

 第四に「大綱」がそれに代わるものとして誇示している「担い手経営安定対策」の無力ぶりと反農民ぶりも明白である。同対策は、農民と政府が五割ずつ拠出して仕組む「保険制度」であるが、米価を一俵千円以下の飼料米や三千円程度の加工用米をもにらんだ市場原理にゆだねて暴落を促進する政策のもとでは、「保険制度」そのものがすぐに破たんすることは目に見えている。また、当初案に対する反発から、直近三年間の稲作収入の六四%補てんから八割補てんに変えたとはいえ、これが「担い手」の経営を安定させるなどとはいえないことは明白である。そしてなによりも、北海道で十ヘクタール以下、都府県で四ヘクタール以下の水田経営規模の農民の経営は「安定」させなくてもよい、つまりこの規模以下の農民には稲作を続けてもらわなくてもよいという“農民のリストラ”策は絶対に許されない。

 農民連は、「米『改革』に対する農民連の見解と提案」を明らかにし、百万枚規模の新聞「農民」号外を配布するなど、“米つぶし”政策に反対するたたかいに全力をあげてきた。農民連・食健連が提出した請願は、秋田県、鳥取県で七割を超える市町村で採択され、自治体首長や農協組合長などの共感もかつてないものがある。北海道・東北・北陸の単位農協や県中央会は千人規模の集会を相次いで開くなど、政府に対する激しい怒りをあらわにした。これらの動きは、ギリギリまで追い詰められた農民や農業関係者の叫びであり、これを踏みにじる政府・与党をけっして許すことはできない。

 たたかいはこれからである。農民連は、(1)ミニマム・アクセス米を削減・廃止して減反面積を大幅に減らすこと、(2)生産費を償う米価を保障する仕組みをつくること、(3)転作条件を整備して、自給率が異常に低い麦、大豆、ナタネ、ソバなどを増産できるようにすること、(4)国が米の価格と需給の安定に責任をもち、大企業の米流通支配を許さないこと、(5)大資本に農地支配を認める農地法の改悪をしないことを求めてたたかう。これが真の米改革の方向であり、多数の農民や農業関係者、自治体、そして国民の声であると確信する。

 安全で安心できる国内産の米や農産物を求める国民世論が燃え盛っているとき、政府・与党の米・農業破壊は、決して国民と相いれないことは明瞭である。春にたたかわれるいっせい地方選挙は米・農業問題を一大争点にし、明確な決着をつけるたたかいである。

 農民連は、今こそ農民が団結し、国民と連帯してたたかいにたちあがることを強く呼びかけるものである。同時に、決して生産から撤退せず、助け合い、支えあって、安全で安心できる国内産の農産物を求める国民の願いにこたえた“ものつくり”に全力をあげることを呼びかけるものである。

(新聞「農民」2002.12.16付)
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2002年12月

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