「農民」記事データベース20021202-565-06

21世紀への挑戦

誰でもできる無農薬・有機稲作(3)

NPO法人民間稲作研究所 代表 稲葉 光國


自然の循環機能を活かした土づくり

 アジアモンスーン地帯と言われる日本や韓国は植物が大変良く育つ地域です。こうした豊かな緑は、無数の微生物が動植物の死骸を分解し、幼い植物に養分を供給して新たな草木を育てる大循環を表した姿です。

 日本人はつい最近までこの循環機能を活かした稲作を実施してきました。しかし、労力がかかり収量が上がらないため、化学肥料を購入して栽培する方式に切り替えてしまいました。

 もう一度この自然の循環機能を見直してみると、そこには夢のような省力・低コスト稲作の姿が見えてきます。昔はワラや木の葉を牛馬の敷きワラにして糞尿と混ぜ、庭に積んで作った堆厩肥を田んぼに入れる土づくりが基本でした。しかしこの方法では、稲の初期生育に必要な養分を十分まかなえないために茎数が不足し、低収を余儀なくされていたのです。熱心な農家は大豆や干イワシなどのたんぱく質を多く含んだ資材を田んぼに入れ、収量をあげてきましたがその労力は大変なものでした。

 この問題を解決したのがボカシ肥とか発酵肥料と呼ばれる菌体肥料です。米ヌカを主体にクズ大豆やオカラ、カニガラ、油粕、漁粕など、身近に手に入る比較的たんぱく質の多い資材を混合し、水分を五〇%前後に調整して積み上げておくと、周辺の土着微生物が飛び込んできて瞬く間に分解してしまいます。

 好気的条件で繁殖した微生物は、水が入って田植えをする頃には死滅し、自分の体内養分を放出しますから、稲は効率良くその養分を吸収して生長します。良くできたボカシ肥であれば十アール当り二百キロ前後で十分です。堆肥の十分の一の散布量ですから、労力はかからず嫌な匂いもしません。

 土づくりはこうした土着微生物を田んぼでどう増やすかという考え方で実施することがポイントです。稲刈り後の田んぼには炭素の多い生ワラが散乱していますが、そのままではなかなか微生物の餌になりません。たんぱく質の多いボカシ肥かミネラルや糖分の多い米ヌカを散布して軽く土と混和し、なるべく乾燥させないようにする必要があります。

 二月になると春草が生えてきますが、これは大事な財産です。雑草は根を深く張って深耕するだけでなく、窒素固定細菌を根の周辺に集め共生します。この雑草を代かきの時に浅くすき込むと抑草効果を発揮します。

 代かき前にはヒエ抑制のために深水管理ができるよう畦畔を高くします。これは畦ぬり機で作成すれば十分です。

(NPO法人民間稲作研究所 代表)

(新聞「農民」2002.12.2付)
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2002年12月

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