21世紀への挑戦誰でもできる無農薬・有機稲作(新連載)NPO法人民間稲作研究所 代表 稲葉 光國
問われるWTO体制と食の安全今年ほど食の安全性に関わる問題が頻発し、WTO体制の本質や行政の責任、食品関連企業のモラルが問われた年はなかったと思います。昨年十月のBSE問題を発端に、食の安全性と農林水産省の失態が次々に表面化してきました。 BSEの問題は、WTO体制が、危険な食品の国際化でもあることを露呈し、国民の食べ物を海外に依存することがいかに危険であるのかを示しました。 中国産冷凍野菜からは基準値を超える残留農薬が検出され、冷凍食品の検査すら行ってこなかった厚生労働省の怠慢が明らかになりました。 こうした事態により、食料の自給率を高め、海外依存の体制を改めなければ国民の健康は守れないということが大きな世論になりました。ところが、無登録農薬が輸入・販売され、使用されていたことが明らかになり、国内農産物への不安も広がりました。 農家の罰則を強化する農薬取締法改正が検討されていますが、農薬の使用量を削減する技術開発や取り締まりを怠ってきた行政の責任を棚上げにしたままの規制強化では「角をためて牛を殺す」ことになりかねません。 一九九四年(平成六年)の自由化議論の時、一部の自由化論者が「海外の農産物の方が安全だ」という妄言を主張しました。これに対し「安全な食べ物は日本の大地から」と主張し、安全な農産物を生産するための技術改善運動が各地で行われてきましたが、必ずしも十分であったとは言えません。 安全な農産物を望む国民の期待に応えるためにも、農薬をできるだけ使用しない生産技術を確立・普及し、安全な農産物の自給率を飛躍的に高めるための技術改善運動が、今こそ求められているのではないのでしょうか? この間、民間稲作研究所では、多くの生産者の実践に学びながら、除草剤を含めた一切の農薬を使用せず、収量、食味、栄養価、コスト、労力などのすべての項目で慣行栽培を超える稲の栽培技術を確立してきました。 今週から十二回シリーズで「誰でもできる無農薬・有機稲作」と題し、私達が実践してきた稲の栽培技術の内容を具体的に解説していきます。 この連載を参考にしながら、ぜひ皆さんの地域で、実践的な技術改善運動を開始されますよう切望してやみません。
(新聞「農民」2002.11.18付)
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[2002年11月]
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