「農民」記事データベース20021118-563-01

千葉・酒々井町

朝市は町民の宝です

20周年 餅投げで盛大に祝う

 「作る人の顔が見えて安心。しかも新鮮でおいしい」と、地域の住民から愛されている千葉県酒々井町の朝市が二十周年を迎えました。町の風物詩として定着し、県内外からの視察も多い「酒々井の朝市」。前日の雨空がウソのように晴れわたった十月二十七日、「二十周年記念まつり」が、同町役場の駐車場で盛大に開かれました。


 魅力は、まごころと信頼感

 町の内外から約一万二千人が参加した朝市まつりのメインイベントは、昔ながらの建前を再現しての餅投げ。会場内に棟上げ段階まで建てられた“朝市家”の上から紅白餅が投げられると、大きな歓声がわきました。

 「やぁ、元気にしてる?」「どうも、毎度さま」――常連のお客さんと生産者で当たり前に交わされる会話。畑から採ってきたばかりの野菜や自慢の手作り加工品をはさんで、よもやま話に花を咲かせる姿は、買う人、売る人の垣根をまったく感じさせません。

 「魅力? そうねぇ、新鮮なことかしら。それに農薬もあまり使ってなさそう。だから、毎週日曜日にここで買い物をして、足りないものをスーパーで買い足すようにしているの」と、近所に住むサラリーマンの奥さん。また、朝市の生産者との親睦会にも参加している自営業のお母さんは、「安心して食べられる! 絶対これよ」と、顔なじみになった農家が作る餅やおこわなどの加工品に太鼓判を押します。

 「組合員が都合で休むと、なじみのお客さんから『体の具合が悪いんですか?』って心配されるんです。そうしたお客さんが励みで二十年間休まず続けてこれたし、積み上げてきたものもあるかなって感じます」と語るのは、酒々井町朝市出店者組合の竹尾忠雄組合長。朝市組合がこの日のために募集した「まつりボランティア」には十七人の応募があり、餅つきや豚汁づくり、交通整理などに力を貸してくれました。

 朝市の開設当初から続けてきた篠原つる子さんはこう言います。「あっという間に二十年が過ぎたって感じ。子どもが小さいころは必死だったけど、今は少し体がきつくなってきたかな。でも『おいしかったよ』って言われるから、やめられないわよ」。二・五ヘクタールの田畑を耕しながら漬ける篠原さんの漬物には、年季とまごころが、ぎゅっとつまっています。

 農家の生活の糧として発展

 酒々井の朝市は、小さい兼業農家が多かった同町で「なんとか農家が元気になれるものを」と、農業委員会で準備会を結成し、神奈川県厚木市の朝市の見学に行って始まりました。

 小坂美恵子さんは「朝市は生活の糧」だと言います。朝市が始まったのは、小坂さんが二十六歳、子どもがまだ六カ月のとき。田んぼと畑、二ヘクタールずつ耕作する小坂さん。「朝市は、自分である程度の荷ぞろえをしないといけない。三日前になるともう気が抜けないのよ」と言いながらも、朝市を続けてきた理由は「輸入農産物が大量に入ってくるようになって、市場が安値安定になったから」でした。

 「朝市がスタートするとき、農業委員は全員、朝市組合に入りました。提案した私たちが実践の先頭に立とうということです」と竹尾組合長。竹尾さんはその時からずっと農業委員を務めており、農家からの信頼は厚く、九七年には町議(日本共産党公認)に当選しました。また、千葉県農民連の副会長として、農民運動の先頭に立っています。

 その竹尾さんに今年、めでたいことがもう一つありました。長男の謙一さんが六月に裕美子さんと結婚。毎週、朝市にも参加している謙一さんは、「子どもの頃から親父たちを見ているけど、みんな楽しそう。僕たちも、これから元気にやっていきたい」と言います。

 町も功績をたたえて感謝状

 朝市に参加する農家は現在二十二戸。朝市組合は、毎週の朝市に加えて、総会やイベントなどで毎月のように集まります。また、年二回、県内外の直売所などの視察を続けて、腕に磨きをかけてきました。その成果が、七年前にオープンした農協の直売所にも生かされており、年々売り上げを伸ばしています。「朝市は、町の農業の発展と切っても切れない関係なんです」と、竹尾さんは言います。

 朝市まつりでは、こうした朝市組合の二十年間の功績をたたえて、町長から感謝状が贈られました。また町は、今年三月に策定した「健康ビジョン」に地産地消を位置づけて、学校給食への地元農産物の使用や朝市の促進を掲げています。

 竹尾さんは、「朝市は役場の駐車場を借りて開かれます。視察に来た人から『よく貸してくれますね』って聞かれますが、朝市は酒々井町の町民みんなの宝なんですよ。これをもっと発展させるために尽力したい」と語っています。

(新聞「農民」2002.11.18付)
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2002年11月

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