「農民」記事データベース20021104-561-23

旬の味


 七年前の冷害の時に平年作を維持したという、レンゲを田んぼに鋤きこむ稲作りがずっと気になっていた。やっと今年、黄金色に実った稲穂の田んぼにレンゲではなくヘアリベッチという牧草を蒔いた▼なかなか芽が出ない。毎日田んぼに行く。これほど田んぼに通ったことがあっただろうか。ようやく十日目に芽が出た。芽が出ることにこんなにワクワクするなんて▼コンバインがせっかく伸びたヘアリベッチを踏みつけて大丈夫かなと、気にしながら稲を刈る。刈り終えた田んぼは切りワラで埋まり、ヘアリベッチはまったく見えない▼ダメかなぁと半分あきらめていたが数日後、切りワラの隙間から緑のヘアリベッチがすくっと伸びている。その細い緑が本当にいとおしい。忘れていた何かが胸を躍らせる▼今度の米政策では、減反を面積ではなく生産量で示すという。この発想のなかに自然を、そして人間を「管理」する不遜な考えが透けてみえる。来春田んぼ一面に咲き誇るヘアリベッチの花を思い浮かべると、何だか不思議と力が湧いてくる。

(本)

(新聞「農民」2002.11.4付)
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2002年11月

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