ひょっとしたら大変な快挙だ!長野県佐久地方 楽農倶楽部の半年
今年二月八日、「野菜を作ろう会」が発足、そのときの仮称「農民連佐久楽農倶楽部(らくのうくらぶ)」はいつしか正式名称になりました。当時のことはもう新聞「農民」に載りましたが、それから半年――。
みんな生産意欲はある展望と呼びかけこそもう生産の意欲がなくなっているかに見えた農民にも、まだまだ意欲があったのです。発足のわずか一週間前に佐久産直センターの土屋浄事務局長(通称ジョーさん)がチラシを作りました。「輸入ものに負けずに作ろうではないか。その条件はあるではないか」と。農民連の到達点と具体的な作物名をあげての簡潔だが、明るく力強い呼びかけが、農民の心を揺さぶりました。 最初の集まりから「スーパースイートきぼう」の勉強会が入ったり、その次は、ネギ作りの熟練者に話を聞いたり。さらにナズナを作ろう、ナタネを作って搾ろうというように、「地域や気候に合ったものを作ろう、それをまずは自分で楽しみ、地域や都会の消費者にも」と、いつも夢や経験が話され、こんなに困難なときに笑い声が絶えたことはありません。
皆をつなげ、励ます楽農ニュース話し合いや理屈だけでなく、いい「きぼう」を作ろうと皆が励んでいるときにも要所々々でニュース「楽農通信」が出され、九月末までに十三号まで出されています。緊急な時は昼寝の時間にも集まります。ときにはファックスや電話がジョーさんから来ます。 勉強会や打ち合わせを短時間でも開きますが、「この忙しいのに…」などと文句をいう人もおらず、けっこう集まりがいいのは、生きたニュースが大きな役割を果たしているからです。
ものを作る人間像「きぼう」の収穫期が近づいた八月初め、私の畑に小林吉彦部会長と土屋事務局長が来て「過熟になるよ」と助言してくれ、あわてて出荷しました。小林さんや土屋さんは、毎日のように会員の畑を見回って、「もう出荷の時期だよ」と声をかけており、この熱意が皆に伝わったようです。 山田米吉さんは、奥さんが入院して早朝にトウモロコシをとっても荷造りする時間がありません。土屋事務局長に「何とかしてくれ」と駆け込み、近くの「お助けマン」こと土屋晴信さん(楽農倶楽部会員で、去年JR運転手を定年退職)が毎日手伝い、晴信さんが忙しい時は井出房子さん(元高見沢電機労働者)も応援してくれました。このヨネさん・ジョーさん・晴さん・ふーちゃんの連携はみんなの中にじわっーと染み込んでいます。 参加者の半分は新顔。専業農家も兼業農家も、定年退職したばかりの人や高見沢電機の現役の労働者も。 最高齢者は小諸の小林今朝兵さん(八十歳)。ナズナを作ろうというと、五、六月には小海町の井出一夫さんが土つきのままナズナを箱に入れて持ってきてくれました。また、八月下旬には小林悦子さんが「トウチャン(今朝兵さん)がナズナの種を取ろうと刈っておいたけれど、種を落とす暇がなくて…。誰でも使ってみて…」と産直センターに届けてくれました。 私も早春のおひたしにする冬菜の種をもらった余りを何人かに持っていって呼びかけました。
秋の夜の熱気――ネギの販売会議佐久の殿様ネギは下仁田ネギの系統で、佐久地方では昔から作っていますが、長い間に変わってきているようです。中国ネギに押されて全国的に意気消沈しているなか、楽農倶楽部は小諸市久保産直組合のネギ苗を共同購入して植えました。モットーは、「売ってもらう」とか「誰かが売ってくれるだろう」とお客さんにならないこと。各自が何か一つでも担おうということです。 「ひょっとしたら大変な快挙だ」という楽農通信で、九月二十七日の夜、急な連絡なのに二十数人が集まりました。都内の生協との大口の商談がまとまりそうなのです。 みんな興奮して、「そんなにたくさんあるかな」「もう中国産など輸入ものはマッピラという人が増えているんだって」「ネギを作っている人全員に呼びかけて楽農倶楽部に入ってもらおう」「春には、『トウチャン、そんなに作って売るあてがある?』なんて言われたけど、やっぱり作っておいてよかった」「佐久は高冷地で昼夜の温度格差が大きいし、これから寒さにあって甘味が出る」「カアチャンにあんまり早く売るなって釘さされたよ」。 夜のふけるのも忘れて、みんなキラキラした目で体を乗り出して話は尽きません。「もうリンゴの出荷が始まっており、いつまでも産直センターにおんぶではだめだ」と、ネギ部会運営委員会ができました。荻原徳雄さんが委員長、晴さんが事務局長という名コンビです。
蓄積生かすはずみに先日、山下始胤・長野県連会長が佐久に来て、「この到達点を踏まえて、桜井農民組合も、二つの産直センターも、特別栽培米研究会も、佐久単一の各支部も、楽農倶楽部も、皆一つのセンター(連合体)へ結集して、産直も税金も、皆の知恵と蓄積を生かして牽引車になろう」と訴えました。そして、この提案の実現に向けて意思統一しました。 楽農倶楽部はそういう方向にはずみをつける役割を果たすでしょう。 (小林 節夫)
(新聞「農民」2002.10.14付)
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[2002年10月]
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