「農民」記事データベース20020805-550-01

顔の見えるお米を消費者に

米屋さんと生産者をつなぐ

7・21大交流会

関連/米屋さんと生産者つなぐ大交流会

 いのちをつなぐ――米を産地まるごと届けたい。「米屋さんと生産者をつなぐ大交流会」が七月二十一日、東京・千代田区のエデュカス東京で開かれました。


産地まるごと届ける関係を

 米屋、米卸、農家、消費者、労働者など二百人を超える参加で、熱気あふれた大交流会。これは、農民に米づくりをあきらめさせ、米屋さんの経営をますます困難にする農政は許せないという思いを共有し、お米とともに産地まるごと届けられる関係を築こうと、農民連が主催したもの(東京城南食糧協同組合が協賛し、日本マタイ株式会社が協力)。八十人余の米屋さんと米卸関係者が参加し、日本の米づくりと米屋さんの経営を守ろうと話し合いました。

 農家にほほえみあってこそ

 「農家にほほえみがあってこそ、街の米屋は成り立つ。日本の農家が作った米が、行き先を失っていることは許せない。米の輸入はストップすべきだ」と、世田谷区の名川精米店、名川斐雄さん(東米商世田谷支部長=74)は言います。

 農家にさらなる米価暴落と減反強化を押しつける米「改革」(生産調整研究会「中間取りまとめ」)は同時に、「米ビジネス」のためと称して、中小の米卸、米屋をいっそう淘汰しようとしています。交流会では米屋さんから「農家と消費者をつなぐ米屋のネットワークを作ろう」という意見が表明され、米つぶし、農業つぶしを許さない共同の第一歩をしるしました。

 子や孫に食べさせる思いで

 “顔の見えるお米を消費者に”と、米卸を仲立ちにして農民連の各産直ネットワークがとりくんでいる「準産直米」は、今年で四年目。来賓あいさつした日本米穀小売商業組合連合会(日米連)の長谷部喜通理事長は、「農民連の米は自分の子や孫に食べさせるつもりで作ったお米」と評価。業界紙もこの交流会の予告記事を載せ、農民連の米を扱う米屋を特集するなどして、とりくみの輪は一回りも、二回りも広がりました。

 業界紙を見て参加した文京区の山本商店、山本常三郎さんは「はじめて参加したが、生産者のみなさんにとても親近感を感じた」と言います。

 産地の生きた情報を伝え

 交流会はまた、米屋さんに産地の生きた情報を伝える場に。東北・北海道、関東、北陸の各ネットは、米づくりの特徴や栽培履歴を冊子にまとめて報告。こうした情報は、米屋さんが最も必要としている情報です。

 「生産者の声を直接聞かなければ、お客さんに自信をもって勧められない」と、夫婦で参加した杉並区のもりた屋米店の森田昌孝さん、ひろ美さん。

 これに応えて、福島・塩川町の物江義明さんが「安全でおいしいお米を作るために土づくりをし、殺虫剤、殺菌剤はいっさい使わず、農薬は除草剤一回だけ。タニシやホタル、トンボなどがいっぱいいます」と発言。石川・辰口町の牧田孝允さんは「無農薬で稲づくりに挑戦するなかで、アキアカネの羽化を始めて観察し、たいへん感動した。私はぜひ田んぼの学校をやりたい」と、思いを熱く語りました。また、千葉県農民連の大木傳一郎委員長は、当日の朝に取ってきた稲穂をもって今年の作柄を報告。福島農民連は農村風景や稲の生育状況を収録したCDを配布。各地の農民連が扱う米以外の商品の展示も、米屋さんの関心を集めました。

 米屋さんからは「消費者は安全・安心なもの、栽培履歴が明らかなものを求めている。それを伝えるアイデアがほしい」「品質のバラツキをなくしてほしい」などの要望とともに、「アトピーに効く米はないか?」といった声も出され、これに農家が即座に答える場面も。また、参加した新婦人の会員からは、新宿区で進めている米屋さん、小売店と共同した街おこしのとりくみが紹介されました。

 第二部の懇親会では、米屋と農家、消費者が、各地から持ち寄った農産物、地酒に舌鼓を打ちながら話し込む姿が、あっちにも、こっちにも。農家が作った赤飯に、「お客さんにも勧めたい」といった声もあがっていました。


米屋のネット作りたい

大阪・米安米穀店 蔵井謙一さん

 私は、関西で十軒の米屋のグループを作っています。このままでは日本の農業がつぶれる、ひいては米屋の未来もないと思っています。そしてこのことは、三度の食事の代わりにコンビニやファーストフードで害になるものを買って食べる子どもの体にも悪影響を及ぼします。

 いま米屋や商店街に必要なのは“提案”です。スーパーの価格競争に巻き込まれないで、例えば旬の農産物と米でこんな料理を作ってみませんかと、提案していくとが大事だと思います。

 私は、農民連の米を扱う米屋さんのネットワークを作りたいと考えています。農民連は、いいものを作ってくれる団体だと信じています。ネットワークを通じて生産者、消費者と販売業者が結ばれれば、国を動かすこともできるし、さらに輪を広げていくこともできると思います。


生と消の接点、重点に

大田区・山田屋米店山田幸朗さん

 六郷米穀商組合は、スーパーやディスカウントに一太刀食らわそうと、一昨年と昨年、農民連のみなさんの協力でイベントを開きました。一年目は一カ所に消費者を集め、千三百人を超える大イベントになり、二年目は四店の店先でにぎやかに行いました。しかし、すぐにはその後の売り上げに結びつきませんでした。

 でも最近になって効果が表れてきたように思います。お客さんの層が変わり、味にこだわる若い人が来てくれるようになりました。もう一歩だと思っています。今年のイベントは、ものを売ることよりも、生産者と消費者の接点になることを重視しようと思っています。消費者は今、安全性に敏感になっており、もうじきこちらに風が吹いてくると感じています。

(新聞「農民」2002.8.5付)
ライン

2002年8月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2002, 農民運動全国連合会