麦秋三題長野県 小林節夫
落穂拾いやっとのぞいた梅雨の晴れ間に、半分残った小麦を荻原徳雄さんに刈り取りと脱穀をしてもらった。小麦は戦前からの品種「伊賀筑後オレゴン」。味にこだわって作る人が各地にいる。 次は徳雄さんの大麦。天気が悪くて刈り遅れたせいで、落穂が「麦茶一回分くらいある」。ミレーの「落穂拾い」を思い出すと、なんとなく画中の人間になったようで、けっこう暑さを忘れた一刻だった。
麦わらとお盆この地方では、八月十三日の夜は「迎え盆」といって、門口とお墓で麦わらを焚き、墓参りをする風習がある。その煙に乗ってご先祖の霊が家の盆棚(仏壇)に来なさるという。 麦作がすたれてから、みんな稲わらを代わりに使うようになった。農協の生活センターは、どこからか麦わらを見つけてきて、八月十二日の夕方の花市で売る。でも、今年はわが家でも胸を張って麦わらを迎え盆に焚くことができる。
ネコ干し脱穀した小麦は乾燥しなければならない。庭に「ネコ」を敷いてその上に広げて干す(写真)。「ネコ」というのは、「猫」とは反対に、アクセントが尻上がりで、稲わらの縄で編んだムシロ(一・八×二・八メートル)のこと。重いのが難点だが、天日で干すにはこれに勝るものはない。 厚手のビニールシートで干したことがあるが、表面は乾いたようでも下はビッショリ汗をかいて、幾日干しても仕上がらない。夜は軒下に「ネコ」をたたんで、その中で過ごすと湿気を呼ばない。先人の知恵である。昨日は唐蓑(とうみ)でゴミや粃(しいな)を取り除いた。農協の製粉所で製粉して、三〜四日後には新粉でうどんにありつける。食い気だけはファーストである。
(新聞「農民」2002.7.29付)
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[2002年7月]
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