「農民」記事データベース20020722-548-05

「ストップ遺伝子組み換え稲全国集会」

試験栽培中の愛知県農業試験場視察

 七月六日に名古屋市内で「ストップ遺伝子組み換え稲全国集会」が全国から八百人の参加で開かれました。「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」など五団体が呼びかけたもの。それと合わせて、遺伝子組み換え稲を試験栽培している愛知県農業試験場を前日に視察しました。


研究の中止を求めて

 厚生労働省に認可申請が出される段階

 愛知県農試と日本モンサント社が共同で五年がかりで開発している遺伝子組み換え稲は、厚生労働省に食品として近く認可申請が出される段階。視察に訪れたこの日は、遺伝子組み換え稲は隔離圃場での実験段階を終え、一般圃場での試験栽培が始められていました。

 この稲は、愛知県農試が育成した不耕起直播に適する品種「祭り晴」の遺伝子を組み換え、モンサント社の除草剤「ラウンドアップ」への耐性を持たせたもの。稲の上からラウンドアップを散布することで、稲だけを残して雑草防除することが可能です。

 モンサント社の言い分を代弁

 試験場の一般圃場では、十アールほどの田を五つの区画に分け、除草剤散布の適期を実験していました。栽培された実験稲は、収穫せずに青刈りするとの説明でした。

 試験場での質疑応答では、参加者から「組み換え遺伝子の環境への影響が心配だ」「除草剤に耐性を持つ雑草が出てくるのではないか」「農薬の使用が増え、残留が増えるのではないか」など、不安の声が相次ぎました。

 試験場の職員は、「今はまだ試験段階で、商品化は先の話であり、心配する必要はない」「稲は自家受粉作物なので、組み換え遺伝子が環境へ広がることはない」「ラウンドアップは人体に害がない」などと、モンサント社の言い分を代弁。除草剤耐性稲によって、低コスト化、省力化をはかることができ、日本農業を救う夢の技術であるかのような説明をしました。

 組み換え作物の作付国、アメリカでは…

 しかし、翌六日に開かれた「全国集会」では、稲の花粉が風速五メートルの中では一・五キロも飛散し、稲の花粉が環境に広がる恐れは多分にあること、また実際に交雑事例があること、さらに世界最大の遺伝子組み換え作物の作付国であるアメリカでは、除草剤耐性作物への除草剤散布量が年々増加し、逆に除草剤耐性作物の収量が年々減少していることが紹介され、遺伝子組み換え作物が決して夢の作物ではないことが報告されました。

 集会ではキャンペーン代表の天笠啓祐氏と、名古屋大学の河田昌東氏が、トークショー。「日本政府は遺伝子組み換え作物のラウンドアップ散布量増加に合わせて、残留基準を緩めるなど、企業のもうけを国民の健康に優先させている」と指摘しました。それに対し、EUでは商品に混入する遺伝子組み換え作物原料を厳しくする流れにあることも報告されました。

 集会の最後には、愛知県農試に対して遺伝子組み換え稲の研究の中止を求め、政府に対しては、遺伝子組み換え稲を認可しないように求めるアピールを採択。集会後には、参加者それぞれが、遺伝子組み換え稲反対をアピールするプラカードやうちわを手に、シュプレヒコールしながら名古屋市内をデモ行進しました。

(産直協 笠原尚)

(新聞「農民」2002.7.22付)
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2002年7月

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