「農民」記事データベース20020708-546-07

6月9日〜13日食糧主権のNGOフォーラム

ローマで出会った世界の仲間たち

 六月九日から十三日までローマで開かれた「食糧主権のNGOフォーラム」で、農民連・食健連の代表は、会議の合間を縫って世界の農民組織・NGO代表と懇談・交流しました。

 痛感したのは、WTOのもとで世界中の家族農業者が敗者にさせられ、アグリビジネス・多国籍企業が勝者になっている現実。しかし、世界中の農民が手を取り合ってたたかえば、「もう一つの世界は可能だ」という確信と強い連帯感に満ちた交流でした。

 交流したのは、カナダNFU(ナショナル・ファーマーズ・ユニオン)のネティ・ウィーブ前委員長(国際部長)、メキシコANECのビクター・カレラ委員長、フランスCP(ス・コンフェデレーション・ペイザンヌ)のジョゼ・ボベ委員長、ノルウエー小規模農民連盟のヘーゲ・ネーランド国際部長、インドネシア農民組合連合のヘンリー・サラジーニ委員長、アメリカ食糧貿易政策研究所のスティーブ・スッパン研究員など。

 一時間以上じっくり話し合ったり、立ち話だったり、「アジアの夕べ」での交流だったり……といろいろでしたが、そのうち、カナダ、メキシコ、フランス代表の話を紹介します。


メキシコANEC

ビクター・カレラ委員長

 「私たちの主食はトウモロコシ(ホワイトコーン)で、八千年前から食べています。メキシコの農民は国内で自給をする能力が十分あるのに、アメリカからの輸入でトウモロコシの自給率は六五%。九年間で農産物価格は七〇%も下がりました。

 しかも、アメリカから輸入されるトウモロコシ(イエローコーン)にはスターリンクが混入されています。いま私たちは『人間の鎖』でトウモロコシの輸入を阻止する運動をしています。アメリカが日本に圧力をかけて米を輸入させ、日本の米農家をつぶそうとしていると聞いています。私たちは、日本の中小農家と団結する必要を感じています」

 (カレラ氏によるとメキシコの農家戸数は三百万戸。経営面積は二ヘクタール。主食の自由化を押しつけられていることを含め、日本とよく似た状況にびっくり。「日本の消費者は外米を食べることを嫌っている」と説明すると、「グレイト=それはいい」とうなずきました)

 「いつかメキシコの農村を見にきてください。メキシコと日本の農家の敵は同じだと思います」


カナダNFU

ネティ・ウィーブ前委員長

 (最初に、真嶋から、世界中の農民がWTOと多国籍企業によって苦しめられていることを明快に分析したカナダNFUの二〇〇〇年四月の論文が大いに役に立ったことにお礼を言うと、ウィーブさんは目を見張って)

 「まあ、読んでくださっていたの? とてもうれしいです。私たちは、『カナダ農民が苦しいのは、経営努力がたりないからだ』と非難され、救いようのない状況に陥っていました。それでアグリビジネスを分析し、なぜこんなにうまくいかないのかを見直しました。

 当時は、政府も学者も『これは考慮に値しない』と言って、無視しました。でも、最近になって、カナダの主要な農業新聞が一面で、NFUの分析は正しかったと書きました。巨大な企業パワーが農民を不利な立場に追い込んできたことが明らかになったのです」

 農民がはっきり言わなければ

 (本当に、この人が四百ヘクタールもの小麦畑を耕す農民なのか? と思わせるほど小柄で品のいいウィーブさん。しかし、四年間NFU委員長を務めた彼女の舌鋒は鋭い)

 「コスタリカとかニカラグアの農家の経営規模は〇・五ヘクタール。私は四百ヘクタールですが、巨大なアグリビジネスに比べれば『小人』です。タイのアグリビジネスのチキン加工工場を見たとき、若い女性が低賃金で機械のように素早く働いていました。カナダの養鶏産業はこれとは絶対に競争できないなと思いました」

 (世界的な農民組織「ビア・カンペシーナ」はスペイン語で「農民の道」の意味。ウィーブさんは現在、ビア・カンペシーナの北米地域の責任者)

 「ビア・カンペシーナは、農民が輸出のためではなく、自分たちの国民のために食糧を作る権利を『食糧主権』だと主張しています。生物の多様性を農民が管理し、農村と文化を守り、他の国からの輸入によって農業を脅かされない権利です。

 農民自身が『自分はこうしたいんだ』とはっきり言わなければ、誰も代わって言ってくれない。

 私は農民ですから、何も考えずに農業だけをやっていたい。しかし、グローバル状況はそれを許さないので、やはりグローバルな運動をしなければならないと思っています。日本の皆さんがビア・カンペシーナに入ってくれることを真剣に考えてくれたら、すごくすばらしいことだと思います」


フランスCP

ジョゼ・ボベ委員長

 (立派なヒゲにパイプをくわえたボベ氏はデモでもフォーラムでも、マスコミの注目の的。「直接行動の闘士」という予測ははずれて、物静かな紳士でした)

 「私たちが遺伝子組み換え農産物(GMO)に反対したのは、九八年にフランス政府が輸入を解禁してからです。最初は、ノバルティス社のGMコーンの種と普通の種を混ぜて使えなくした。それで裁判にかけられた。そのときに初めてフランス国内でGMOの議論が世論レベルになりました。

 いまではフランス国民の八〇%が反対し、ヨーロッパでは暫定的禁止状況になっています。

 こういう運動のなかでCPはフランス農民の三〇%を組織しています。世論からも注目され、二月の調査では『農民と消費者を守っているのはCPだ』と答えた人が四七%にのぼりました。第一勢力の組織は一三%だったんです」

 「アメリカの輸出補助金増加は、価格をどんどん引き下げ、ヨーロッパだけでなく世界中の農民に大きな影響を与えると思います」

 「巨大な企業農場は価格が下がっても大丈夫でしょうが、家族農家はそれではやっていけない。こういう工場的農業には反対しています」

(新聞「農民」2002.7.8付)
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2002年7月

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