「農民」記事データベース20020708-546-04

全国学校給食シンポ

子どもたちに安全な農産物を

地域で支えあい、育んで

 「家庭・地域と支え合う、いのちはぐくむ学校給食を」――全国学校給食シンポジウムが、六月二十三日、東京都内で開かれました。全国から参加した六百人余で、会場は臨時イスも満杯。実行委員会には、自治体問題研究所、自治労連、新婦人のほか、食健連や農民連も参加しました。


 はじめにコーディネーターの竹下登志成さんが「学校給食は、子ども時代を形成する大切な要素。豊かな学校給食にするには、いま地域の参加が求められているのでは」と問題を提起。つづいて、今年二校で民間委託が始まった「日野市(東京)のゆたかな学校給食をもっと良くする会」事務局長の松川美樹さん、群馬県高崎市教育委員会参与で健康教育課長の中島雅俊さん、多古旬の味産直センター代表理事の高橋清さん、中京女子大学の新村洋史さん、小児科医の千葉友幸さんの五人のパネリストが発言しました。

 自校方式で

 中学一年生の母親でもある松川さんは「おいしくて安全なのが当たり前だったが、民託をきっかけに市民の関心も高まった。これからも運動を続けていきたい」と思いを語りました。

 中島さんは、行政方針として自校直営方式の学校給食を貫いてきた群馬県高崎市の取り組みを報告。「センター化の岐路に立ったこともあったが、子どもや父母などにアンケートをとって、歴代市長の決断で自校を守ってきた。市の負担で、栄養士と給食技師を一校一人ずつ配置し、研修を月一回は行っている。自校方式は子どもと調理員の顔が向き合っており、調理員の心が乗り移った給食は残滓も少ない」と発言。市内の農家や農協と提携した地場産野菜の活用や、地場産大豆を原料にした味噌や醤油が、栄養士の研修のなかから生まれたことを紹介しました。

 生産者から

 また、高橋さんは学校給食に供給する生産者の立場から「未来を担う子どもたちには、日本の大地で生産した安全でおいしい農産物を食べてほしいというのが、農家の素朴な思いだ」と発言。開始当初から交流を大切にして、モンシロチョウの青虫つきのキャベツや、葉つきのニンジンを送ったら、子どもたちが絵や作文を送ってくれ、農家の誇りや希望にもなっていることを報告しました。

 「グローバル化、マクドナルド化するいま、学校給食への考え方やイメージを根本的に変えるべきではないか。見えないものを見えるようにするのが食教育。学校給食が地域の食教育のセンターになることが求められている」と発言したのは新村さん。競争させられ生き甲斐が見つけられないなど、今の子どもたちの抱える困難にふれて「共に食べることは共に生きること。人と人をつなぐ学校給食にしよう」とよびかけました。

 食物アレルギーを診察している千葉さんは「高タンパク・高脂肪の欧米型食生活や、残留農薬や添加物などの化学物質が、小児成人病やアレルギーの増加を引き起こしている。最も心配されるのが脳への影響だ」と指摘し、学校給食の民間委託に反対しました。

 会場発言では、農民連食品分析センターの石黒昌孝所長が、冷凍野菜や輸入小麦のパンから残留農薬を検出したことを報告したほか、「民間委託などの合理化は、政治の流れと切り離して考えられない。子どもたちの間にも貧富の差が広がる今、せめて給食だけでも皆が平等にとの願いで、精一杯給食を作っている」(大阪府寝屋川市の調理員森正子さん)などの発言が相次ぎました。

(新聞「農民」2002.7.8付)
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2002年7月

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