「農民」記事データベース20020701-545-12

演劇

シアターX名作劇場『夕凪』『盗賊戯談』

戦前作の醍醐味


 94年の秋からスタートした「シアターX(カイ)名作劇場」。日本の近・現代秀作短編劇一〇〇本シリーズ上演として、年二回のペースですすめられています。これまで、第1回の小山内薫「息子」をはじめ、眞山青果「玄朴と長英」、飯沢匡「藤原閣下の燕尾服」、久保田万太郎「釣り堀にて」(写真=前回公演・中川忠満撮影〈写真はありません〉)などを上演してきました。今回は15回公演として、小山祐士「夕凪」と邦枝完二「盗賊戯談」をとりあげます。

 「夕凪」は、瀬戸内の城下町を舞台に八人の女たちの交錯する思いを描いた一幕。36年(昭和11年)に発表された作品。小山流の方言といわれる広島・福山市を中心にしたことばで語られており、戦前の雰囲気をふんだんに知ることができる貴重な作品といわれています。今回が初演となります。小山祐士は「十二月」「二人だけの舞踏会」「泰山木の木の下で」などの作品を書き、広島や原爆にこだわった劇作家として活躍しました。

 「盗賊戯談」は自称もと押し込み強盗と、かたやもと直参を名乗る二人の商人。知り合った旅篭で賭けをしますが…。徳川から天朝に世が変わっても、変わらぬものを風刺した一幕。25年(大正14年)の作品。作者の邦枝完二は作家・木村梢(俳優・木村功夫人)の父。戦後、新聞連載小説などで活躍した作家としてよく知られています。今回の作品は戦後初めての上演となります。

 名作劇場を演出する川和孝さんは「私自身が新劇の第二世代ですから、戦前に活躍した第一世代のやった仕事を継承しておく必要があると感じてはじめました。とくに、一幕ものにこだわっているのは、一幕ものには人生のエッセンスが凝縮されており、演劇の醍醐味があるからです。日本人の作家でもこんなにいい作品があったのかと思います。人間と人間の葛藤や人生の機微にふれたものなど、おとなが楽しめる芝居の要素をもっています」と語ります。出演は藍ひとみ、山崎七甫、納谷六朗ほか。

(鈴木 太郎)


 *7月9日〜14日、東京・両国・劇場シアターX。連絡先=シアターX、電話03(5624)1181

(新聞「農民」2002.7.1付)
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2002年7月

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