農水省・「食」と「農」の再生プラン「消費者重視」掲げるが“危険な輸入食品”一切触れず
農水省は四月十一日、「『食』と『農』の再生プラン」を発表しました。サブタイトルは「消費者に軸足を移した農林水産行政を進めます」――。「生産者重視から消費者重視へ」は、武部農相の常とう文句ですが、これは、BSE調査検討委員会に「重大な失政」と批判されたことへの“たちの悪い開き直り”以外の何ものでもありません。 「これまでの農林行政が生産者重視というが、農村に住む人はそう思ったことが一度もない。どこの国の農林行政かと思った」。四月三日の衆院農水委員会で参考人の田中滋久さん(宗谷BSEを考える会会長、酪農家)は、こう語りました。また、BSE調査検討委員会委員の日和佐信子さん(全国消費者団体連合会事務局長)も、「農水省が生産者の立場を考えて政策をとっていたとは考えられません。今回の問題で生産者がいちばん打撃を受ける結果になっているわけですから」と語っています(「しんぶん赤旗」日曜版4月14日付)。 そのうえで「プラン」を見ていくと、「食の安全と安心の確保」では、JAS法の改正やトレーサビリティーシステム(生産履歴がわかる仕組み)の導入など、厳しい国民の目に応えた部分もあります。今国会に提出したJAS法改正案は、罰則を大幅に強化するとともに、違反業者名を公表しやすくするというもの。これまでは、違反業者に対して「指示」を行い、「指示」に従わなかった場合に業者名を公表することになっていましたが、この規定をなくして必要に応じて公表できるようにします。 しかし「プラン」は、残留農薬が重大な問題になっている輸入食品については一切触れていません。そのことを十一日の会見で記者に問われた武部農相は、「農水省だけではやり得ないかもしれない」と述べるだけ。やる気のないことをあらためて表明しました。 一方、「農」にかかわる部分は、大企業=株式会社の農業への参入や農地法の抜本改悪など、小泉構造改革のもとでの農業つぶしをさらに推進していくことを鮮明にしているのが特徴。消費者重視どころか、大企業重視と言うべきものです。 また「プラン」は、「米政策を大転換」するとして、「米の生産調整や流通の見直しについて、検討を深めていく」と述べています。これは現在、高木元農水事務次官など最悪の布陣で議論を進めている生産調整研究会での検討をあてこんだもの。昨年、国民的な反撃でつまずいた計画流通米制度の廃止などの大改悪を何としてもやるという決意表明にほかなりません。 武部農相は会見で、「十四年度でこの政策の見直し案をまとめたい」と語っており、農業を守り、食糧を守る世論を急速に広げる必要があります。
(新聞「農民」2002.5.13付)
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[2002年5月]
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