「農民」記事データベース20020506-537-20

夏のトウモロコシに初挑戦

就農一年生岡本康伸さん

愛知県・田原町


 晴天の四月十六日、愛知県豊橋市で開かれた「春フェスタ」に家で作った紅甘夏を持ち込み、タケノコやフキ、タマネギなどを熱心に販売する岡本康伸さん(25)。愛知県田原町で牛の肥育と柑橘、野菜、米づくりを営む家業を継いだ農業後継者の一年生です。

 好評のイベント春フェスタ

 この日、康伸さんが農民連のテントに持ち込んだ紅甘夏は大好評。「さっき買って食べたのがおいしかったので」と、また買いに来る人も。「これいくら? おまけしてよ!」と、野菜をたくさん買い求める若い看護婦さんのグループもいて、その迫力に、対応した康伸さんは苦笑いしていました。

 愛知県田原町は野菜の産地として有名な渥美半島にある町で、岡本さんが農業を営む「浦」という地域は、その昔、三河湾の干潟に隣接した地域でした。今では、この干潟を埋めて造成した広大な敷地にトヨタ自動車(株)田原工場が建っています。

 肥育牛百頭に野菜とみかん

 康伸さんも、農業高校卒業後、このトヨタ自動車の組み立てラインで働いていました。しかし、夜勤が大変なことと、意見を言ってもなかなか反映されない職場の実態もあり、昨年一月、六年間勤めたトヨタ自動車を退職しました。

 「班長さんによりますが、途中でラインを離れてトイレに行くことができないんですよ!」。「就農してうれしいことは?」と聞くと「好きな時にトイレに行けること。普通かも知れんけど、これはすごい思う」という答が返ってきました。

 干潟の埋め立てにともない、岡本さんの家も農業に転換しました。お父さんの久夫さん(57)は「子どもの頃はノリとアサリで生計を立てていたが、今は農業専門だ」と言います。現在、岡本さんの家では、北海道から導入したホルスタインの去勢牛を、常に百頭肥育し、みかんを四反歩(四十アール)作っていますが、康伸さんの就農をきっかけに、野菜の栽培に力を入れています。

 周りには気の合う仲間が…

 康伸さんの仕事は、野菜のほかに、牛のエサやりや、みかんの管理など多岐にわたり、今年は初めてトウモロコシ「スーパースイートきぼう」の栽培に取り組みます。これからトウモロコシの植付があると話す康伸さんは、近所の友だちとお酒を飲みに行くことが好きだとか。「一人では飲みませんが、飲みながら話すのが好きなもんで」と照れながら話す康伸さんの携帯には、頻繁に呼び出しがかかっていました。「ひま人が多いもんで」と苦笑いする康伸さんの周りには、気の通じた仲間がたくさんいるようです。

 お母さんは地域の介護ヘルパーとして働き、お兄さん、お姉さんは現在、名古屋で働いています。二男である康伸さんが就農したことで、お父さんの久夫さんは「やってくれれば助かる。あと継いでくれる人がいる方がいいでね」と目を細めていました。

(森吉 秀樹)

(新聞「農民」2002.4.29・5.6付)
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2002年5月

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