追跡量販店の価格競争に泣く市場野菜の安値、なぜ続く
生鮮野菜の価格低迷が続いています。なぜなのか? 暖冬による豊作、BSEの影響、氾濫する輸入野菜……理由はさまざまです。そんな安値要因の一つとみられる大型量販店の、取引の実態を追ってみました。
大型量販店にあわせ「せり原則」廃止全国の青果物を扱う中央卸売市場の取引をみると、二〇〇〇年度の野菜のせり・入札の割合は初めて四割を切り三五・三%。前年度と比べ一二・七ポイントも落ち込みました。これは定時・定量・価格の安定を求める大型量販店の取引実態にあわせて、「せり原則」を廃止し、相対取引が自由化されたためでした。この大型量販店の価格競争に市場が巻き込まれるとどうなるか。大手スーパーと取引がある仲卸会社の経営者・Aさんが証言します。 「特売品の値を決めるのは二週間前です。スーパーは、その値をもとにチラシを作り宣伝する。二週間前に千円と決めたものが、市場価格が二千円になったりすると、お互いに折り合いをつけ、折半で泣くということになる。品目が違うだけで、そういうことは毎週ある」 取引品目が八十種あるとすれば、三十から四十種は二週間前に値決めします。バイヤーの会議があって、「旬のものはこの値段でできないか」とスーパー側からもちかけてきます。
欠品出せば、三割のペナルティー料負担「スーパーが特売のときは一日、五十万円から六十万円損することがある。十品目もの特売のときは、シーズンによって極端に品が足りなくなることがあり、急に値がはねて大きな損をする。値動きが大きいこれから春先がこわい。霜が降りたりして成長がうまくいかないことがあるからだ」昨年の十月は、マツタケの取引で一日で八十万円の損をしました。そのときは三トンの注文があったのに、一トンしか入りません。あわててあちこちからかき集めるのですが、そうなると相場が上がります。そのうえ、輸送その他のコストもかさみます。そのすべてが仲卸の負担です。「二百万円くらいの損を覚悟していたのだが、八十万円ですんでよかった。季節のものは短期間勝負なので、欠品を出すと大きな注文がこなくなる」。 Aさんは、こうしたリスク回避策として五社くらいに注文を出すことがあります。そのうちの三社はいざというときの補欠みたいなものですが、注文した以上は買わざるを得ません。そのうえ、欠品を出せばペナルティー料として、不足した品物の値段の三割を負担させられる、といいます。
量販店と対等にやれるシステムづくりを仕入れには、価格でも苦労します。市場の入荷量を見ての相場は八百円でも、どう交渉して六百円、五百円にするか。値切れるものは値切って、たえず安く買わないとスーパー相手では生き残れません。卸売会社幹部のBさんは、「量販店と対等にやれるシステムづくりをしていかないと、天秤にかけられ、市場を変えられることになる。だから卸会社は、不満はあっても目をつむってやる。それで客をとらえ、周年でもうかればいいとなる。物が売れなければ生産者の手取も小さくなる。市場も厳しい環境でやっている」といいます。 また、ある卸会社部長のCさんも、「いま取引しているスーパーの場合、前日に発注がくる。店の在庫のロスをなくすために、ぎりぎりのところで注文を出してくる。数を揃えることができないと、よそに行かれてしまう。バイヤーには天候に左右される農産物の特性がわかっていても、会社の上層部が決めて力で押してくる。品物を急きょ集めるにはそれだけコストがかさむ。その分、こちらが負担するしかない」と嘆いていました。 優越的地位を利用しての、定められた量の、安定した価格での取引は、大型量販店が求める絶対条件。それが輸入品の氾濫とともに「安値安定」の基調をつくっている、といえるようです。
大型量販店優位仲卸の苦しみ月刊誌『食品流通経済』から大型量販店との取引で、仲卸会社がどう苦労させられているか、月刊誌『食品流通経済』の「レーダー」欄から拾ってみました。〇…スーパーで仕入れた方が安い。このような冗談を言う青果店、魚店。一体どうなっているのか。なにやら不自然な臭いがする。スーパーも一般小売店も、商品調達に公正な舞台が失われているのかもしれない。そこまで格差が開くとすれば、市場仕入の一般小売店の苦しみがうかがえる。(二〇〇〇年六月) 〇…スーパーの株を買っている大手仲卸。量販店への対応はそこまで気を使わなければならない。スーパーの支配権を得るなどという大きな考えではない。とてもそこまでの力はない。株を買うのもスーパーへの付き合いと支援。大手対応はさまざまな苦労が伴う。(二〇〇一年十一月) 〇…まずスーパーに優先的に売る。残りを仲卸が買う。普通は仲卸経由でスーパーが仕入れるものであるが、この市場は卸がスーパーにじかに売る。仲卸は品を揃えるために他市場に行かなければならない。もう少し仲卸の事を考えて欲しいとの言い分。関東にて。(二〇〇一年十二月) 〇…スーパーのやり方は辻褄が合わない、と憤る中央卸売市場仲卸経営者。センター使用料金などもその一つと言う。本来、スーパー自身のためにつくったセンターのはずなのに、この使用料を納品する仲卸業者にかぶせるなどは筋が違うのではないか、と言うもの。しょせんこれは理屈ではなく力関係。(二〇〇二年三月)
(新聞「農民」2002.4.29・5.6付)
|
[2002年5月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2002, 農民運動全国連合会