「農民」記事データベース20020422-536-01

緑と若者あふれる国 インドネシア

関連/豆腐と納豆もあるインドネシアの食事

 熱帯特有のさまざまな表情を持つ緑があふれ、街にも村にも若人や子どもたちがいっぱいの若い国インドネシア。四月一日から五日まで首都ジャカルタで開かれた「農民の権利についての東南アジア・東アジア農民会議」に農民連を代表して参加しました。日本から参加したのは、コーディネーター兼通訳の伊庭みか子さん、有機農業をやっている黒澤勝さん(茨城・大宮町)と私。農民会議の結果については次号で報告することにして、垣間見たジャワの農業と農民の表情をリポートします。
(真嶋良孝)


現地で垣間見た

ジャワ農業と農民の表情

 「自給と多様性」耕して天に至る

 成田空港を昼に発ってジャカルタ市内のセミナーハウスに着いたのは三月三十一日夜十時。ニコニコ顔で出迎えてくれたインドネシア農民組合連合(FSPI)のヘンリー・サラジー委員長が「深夜二時に貧農(小作農あるいは土地なし農民)の権利侵害の実態調査に出かけます。睡眠はバスの中で」と、こともなげに言います。

 冷房が効きすぎのバスで走ること六時間。眠い目をこすりながら見る車外には、バナナ、マンゴー、パパイヤ、パームなどの熱帯樹林と水田、野菜畑が広がります。ジャワの水稲は三期作。稲刈りと田植え、青々と繁茂中の水田が併存する光景はなんとも刺激的です。

 ジャカルタから南東に直線距離で二百五十キロ。ガルー市の現地農民組合事務所で事情を聞き、調査地点のタンジュン・カラン村へ。山の上まで広がる棚田がひときわ目を引きます。汗を吸ったタオルをしぼりながら登った山の上は、よくぞここまでと思わせるほど耕されています。

 ヘンリー氏が道すがら説明してくれました。

 「インドネシアは食糧を自給する力を持っているが、オランダの植民地政策と最近の政府の方針によって、食糧輸入国になっている。とくに貧農は自分が食べるものを作ることを認められていない。だから、この地域では自給をめざして自主耕作をしている」

 自主耕作地は山の上の二千ヘクタール。水稲のほかにオカボ、サツマイモ(紫、白、黄)、タロイモ、キャッサバ、トウモロコシ、バナナ、パパイヤ…と多様な作物が目につき、ふるまわれた食べ物のおいしいこと。何度も聞かされた「自給と多様性」というスローガン、そしてインドネシアの農民の勤勉さに心うたれました。

 山の上にも子どもたちの姿があふれ、学校まであります。

 トラウマを払拭し農民の権利を

 このタンジュン・カラン村は、オランダが先住民の土地を略奪して紅茶のプランテーションを開き、一九七〇年代なかばからは国家(林野局)が強権的に松を植林し、八百戸の村人は一日三千〜五千ルピア(五十〜九十円)の超低賃金で働く山林労働者にさせられてきた歴史があります。

 村人たちがたたかいにたちあがったのは二年前。伐採期を迎えた松を伐り、自分たちで売りに行った村人を軍と警察が逮捕し、村を襲撃したのです。しかも村人を「インドネシア共産党の手先だ」と攻撃したといいますから、どこの国の支配層も同じようなことをやるもの。

 村人は地域の貧農組合(SPP)に相談して反撃にたちあがりました。

 いま、村人たちは堂々と横断幕を張って自主耕作にいそしんでいます。村人と貧農組合の団結が固く、警察も手を出せないのだといいます。

 FSPIの活動は着実です。ガルーの事務所には、黒板に「農民の権利」と書いた教育マニュアルが張ってありました。ヘンリー氏は、こう説明してくれました。

 「土地に対する権利を主張してたたかいに立ち上がると、弾圧と虐殺が繰り返された。土地を求めれば殺されるというトラウマ(心の傷)は深い。これを払拭するために、農地と食糧の自給、そして自らを組織することについての農民の権利を自覚してもらうこと。われわれはここに一番力点を置いている」

 私たち調査団を迎えて山の上で開かれた集会には五十人を超える村人が集い、次々に立って権利侵害の実態を告発します。「もの言う農民」たちです。

 たっぷり説明を聞いた後に見る棚田は、ひときわかけがえのないものに見えました。


豆腐と納豆もあるインドネシアの食事

 インドネシアの主食は「ご飯」。大きなザルにご飯が山盛り。これを各自が皿に取り、スープをちょっとかけ、同じ皿に鶏や魚のから揚げやヤキトリ(サテ)などのおかずを盛って、左手で丸めながら食べます。

 インドネシア(ジャワ)の米は、インディカとジャポニカの中間の「ジャワニカ」。ネバネバを吹きこぼして「煮る」インディカに対し、ジャワニカは電器釜などで炊きます。チャーハンはありますが、オカユはほとんどなく、日本人や韓国人と同じく「ご飯」として食べます。

 おもしろく懐かしかったのは大豆料理。「トフ」(豆腐)は日本風にいえば「厚揚げ」、「テンペ」は大豆を粒のまま発酵させた「固め納豆」。いずれもヤシ油で炒めたり揚げたりして、トウガラシをベースにした調味料を付けて食べます。インドネシアは島国なので魚介類も豊富。魚(イカン)やイカ、タコ、貝、干物などが食卓を飾ります。

 完熟バナナやロングパパイア、スイカ、ミカンなどの果物が、辛くなった口をいやしてくれます。

 ただし、イスラム教徒が八割以上を占める国なので、原則として飲酒習慣がないのが、ちょっとものたりない。

(新聞「農民」2002.4.22付)
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2002年4月

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