「農民」記事データベース20020408-534-01

野菜価格

この大暴落はなんだ!

店頭に見る“地獄”の落差

関連/生産者・小売り 価格二重併記制に


生産者は大赤字、消費者には高値強いる

 キャベツが一個たったの五円、ダイコンが一本十円、ホウレンソウが一束十円、ニラ一束が十五円……。「地獄を見るような思いだ」という産地の声が聞こえてくる最近の野菜の安値。「すべての農産物がこんなに安いのは初めての経験」と農家が口をそろえる、再生産価格を大きく割り込んだ暴落価格が、産地を崩壊の淵に追いやっています。

 ところが! 新聞「農民」編集部が都内のスーパーを独自に調査したところ、「キャベツが半分で百二十八円」「半分のダイコンが百四十八円」「ニラ一束が九十八円」など、安値どころか、けっこういい値で並んでいるではありませんか!

 キャベツの売値は、生産者の手取りの五十一倍、ダイコンは二十九倍……。産地から消費地までの輸送コストなど、最低限必要な経費があることは百も承知ですが、あまりにグロテスクに開いた農家の手取りと店頭価格は、消費者も望まないはず。ましてや、輸入野菜から次々と残留農薬が検出されているもとで、安心して食べられる国内産地をつぶしているとなれば、なおさらです。

 編集部の調査結果と産地の思い、それにこの問題を解決しようと試みたフランスのとりくみを紹介します。

 農水省の調査でも明らかに

 店頭価格と農家手取りの異常な開きは、農水省の調査でも明らかになっています。「食品流通段階別価格形成追跡調査」は、昨年十一月、東京と大阪の小売店で売られていた二十一品目の青果物について追跡調査したもの。ハクサイの小売価格は、生産者価格の七倍、キャベツは四・五倍、ダイコン四倍、ミカン二・八倍、リンゴ二・五倍などの結果が出ています。

 しかし、この調査結果をよく調べると、さらに深刻な実態が浮き彫りになりました。それが図II〈図はありません〉。農水省は、店頭価格と、段ボール代や選果経費などを足した生産者価格を比較していますが、実際に農家の手取りになるのは、それらを引いたもの(庭先価格)。産地や規格によっては、庭先価格が赤字になっているものもありました。

 例えば、店先で一個百六十円で売られていたキャベツ(東京産)の農家の手取りは、マイナス十六円。一本五十円の千葉産・M規格のダイコンの手取りは、マイナス四円など。

 工業製品と違って、農産物に規格外はつきものです。しかも、店頭ではしっかり値段をつけて売っているものを、農家は懐から持ち出して出荷しているというのは、かなりハチャメチャな話ではないでしょうか。


デパ地下売り場をのぞいてみると…

生産者価格と比べてなんとキャベツ51倍・ダイコン29倍

 東京・池袋にある“デパ地下”(デパートの地下)スーパーで、おもな野菜の売値を調べました。それと、農家から聞き取った手取りを比べたのが図I〈図はありません〉

 農家に「都心のスーパーはこんな値段で売ってましたよ」と話すと、「えー、そんなに高く売ってんの!」と驚きとともに、安値にどれだけ苦しめられているか、苦悩の声が返ってきます。

 愛知県豊橋市で露地野菜を作っている伊藤政志さんは、「十二月から四月までキャベツを出荷しているが、箱代などを差し引くと、一個五円から二十五円しか手元に残らない。労賃を計算に入れれば、完全に赤字だ」と話します。

 栃木農民連の海老原恒夫事務局長は、「ニラ一束が十五〜二十円。生産費の半分以下の価格だ。昨年三月は、七十万円から八十万円の売り上げがあったが、今年は三十一万円に落ち込んでいる。年明け以降、どの野菜も、半値か三分の一くらいの価格が続いている。これまでになかったひどさだ。どん底に突き落とされたと実感する」と語っていました。

(新聞「農民」2002.4.8付)
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2002年4月

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