炭焼き農民のすすめ(1)杉浦銀治
春よこい「炭やきは地球を救う」と題するフォーラムが、三月九日、東京の錦糸町三井生命ホールで開かれた。炭化によって二酸化炭素を固定するプロジェクトや、酸性雨によって立ち枯れた森林を蘇生させる炭の活用などが報告され、活発な討論が行われた。私も、このフォーラムの世話人を務めた。愛知県の農家に生まれた私のこれまでの人生は、つねに炭とともにあったといって過言ではない。その間、日本の木炭は、石油やガス、電気に熱燃料の座をゆずったが、今また「地球の薬」として注目されつつある。その用途は、水質浄化、土壌改良、微生物活性、床下調湿、鮮度保持、地温上昇、融雪など幅広い。ここでは、農業分野での活用を中心に紹介していきたい。 厳寒、豪雪の中で生活する人の、春を待ちこがれる思いは格別である。一日も早く大地を消雪して地の恵を得たいと思う。昔から黒土や灰や木炭粉を雪の上に散布してきたが、最近は化学薬品を融雪剤に使っている。 木炭の融雪試験は、一九八四年に北海道名寄林業指導所の竹花邦夫氏(現・道立林産試験場)がやっている。北海道の主要な樹種であるカラマツの木炭が、融雪剤として活用できるか、その効果的な散布量と時期、散布法についても調べた。 場所は、北海道上川郡下川町の民有地。下川町森林組合(現・山下邦宏組合長)のカラマツ木炭と、市販の通称「タンカル」(ススで黒く着色した炭酸カルシウム)を使って三月二十四日から試験区内の雪が消える四月二十三日まで実施した。雪中、雪表の温度を測定。粉炭の粒度や散布量を変えたり、散布法も、手撒き、スノーモービルを使った全面散布、列條散布を試した。 結果は、一平方メートル当たり十〜二十五グラムの少量散布のカラマツ木炭で、九十グラム撒いたタンカルとほとんど同じ効果が得られた。カラマツ木炭は、少量で早く融雪することが実証された。 また、散布時期は、平均気温がマイナス五℃以上、最高気温がプラスになると効果的で、雨や暖かい風で雪がシャーベット状になると融雪が急激に進む。粉炭粒度は一mm以下がよく、一平方メートル当たり二十グラムで八〜九日早く、列條撒きでは十二グラムで五日早いという結果が得られた。 木炭は融雪効果のほかに、植物の生育に適したpHの調整やミネラルの補給、微生物の活性化にもなる。太いアスパラの見出しなどにも活用でき、これこそ雪国農業の新技術である。 (隔週掲載)
筆者プロフィール 一九二五年生まれ。帝室林野局東京林業試験場を経て、農林水産省林業試験場木材炭化研究室長を歴任。現在、炭やきの会副会長、国際炭やき協力会理事として国内、海外で活躍中。著書に「木酢液の不思議」(全国林業普及協会)、「炭焼革命」(牧野出版)など。 (新聞「農民」2002.4.1付)
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[2002年4月]
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