休耕田を自然公園に農家を先頭に町ぐるみ千葉県多古町
両脇を海抜二十五、六メートルの山に挟まれた、一・二ヘクタールほどの田んぼが広がる千葉県多古町の谷津田。――それも今は昔、稲作の減反ですべてが遊休地となっています。そんな荒れ果てた谷津田を、産廃の捨て場にさせないでどう復元・保存していくか。知恵を出し、労力を提供しあって、自然公園に変えていく住民ぐるみのとりくみが進んでいます。 二月のある土曜日。多古町のコミュニティプラザの一室で、朝から熱のこもった意見が交わされていました。 「池には、メダカを放流させていただきたい。自然のメダカは、古来からあるクロメダカです。増やすのはいたって簡単ですが、自然の保護、種の保存を意識的にやらないといけない」(十数年間、淡水魚を飼育している元小学校長の渡辺武さん、七十一歳) 「あくまでもお金をかけないでやるのがいい。花を作っている人は、人にあげるのが楽しみなんです。宣伝すれば花菖蒲だってただでくれる人はいる。コスモスなんか、みんなで種をとってきて蒔けばいい」(高校の理科の先生だった小池由紀男さん、六十一歳) 「私たちの会は連絡網がしっかりしています。作業をやるとか勉強会のときは、いつでも声をかけてください」(地元のボランティア団体・四季の会の土井節子会長) 参加したのは三十数人。予定の時間を延長して、話し合いは昼過ぎまで続きました。 「花が好きだから」と参加した松山庭園美術館で働く平山敬子さん(54)は、ヤマアジサイを育てて準備しています。 地元のコンビニで働く林直子さん(22)たちは、お客さんから話を聞いて興味をもち、草刈りにも毎回参加している若者トリオです。「公園は、車イスの人や老人でも観賞できるように手すりをつけたり、トイレも工夫して…」と夢をふくらませる林さん。 ある会員からはすでに、二トントラック二台分のサツキの苗が届いています。 休耕田の谷津田と周りの山林を里山公園にと、桜宮自然公園をつくる会が誕生したのは、昨年の十一月十八日。町の農業委員会の会長を務める所英亮さん(千葉県農民連北総農民センター会長)の提案によるものでした。 「町の事業ではなく、住民が参加した、住民が中心の町づくりで、谷津田を復元できないか。田んぼを一時的に保全する方法にもつながる」 所さんは、いま「つくる会」の会長を務める佐野豊三さん(77)と地主のところを回って、話を進めてきました。町長とも何度か会談し、一晩で九人の地主の賛同も得て、会の発足となったのです。 谷津田の草刈りは、会の発足の日に始まりました。草刈機やチェーンソー、火炎放射器、鍬、鎌……めいめいが思いの道具を手に駆けつけました。その数ざっと五十人余。そこには町長の姿もあります。篠竹を刈り、潅木を切り倒し、枯れ枝や草は火炎放射器で焼き払う。作業は二時間近く続きます。そんな作業はもう四回になります。 谷津田はどんな役割を果たしているのか、もっと勉強しなければと、県立中央博物館も訪ねました。つくる会の役員三人と町長、八人の農業委員、総勢十二人が参加。谷津田のすばらしさを学んできました。 「町民のなかには豊かな夢があり、知恵があり、大きなエネルギーがあるんですね」と、所さんたちは大いに励まされながら、五月の仮オープンに向けて気をひきしめています。 (石部 傑)
土井正司町長の話 (新聞「農民」2002.4.1付)
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[2002年4月]
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