どっぷりと発ガン性農薬中国国内でも被害者続出いま食卓に急増する中国野菜は安全か(1/2)香港などで「毒菜」と恐れられている実体を問う
急増する輸入野菜のなかで、とび抜けて伸びている中国野菜。それが農薬まみれで、香港では『毒菜』と呼ばれて恐れられている――こんな実体を暴露した新進気鋭のルポライター、瀧井宏臣さんと、農民連食品分析センターの石黒昌孝所長が対談しました。
語る人農民連食品分析センター所長石黒昌孝さん フリーライター 瀧井宏臣さん 瀧井宏臣プロフィール 一九五八年生まれ。早稲田大学卒業後、NHKに入社。報道局社会部記者などを経て、現在フリーのルポライター。『週刊文春』などで中国野菜の農薬汚染をテーマに執筆。
石黒 瀧井さんは、中国野菜の農薬汚染の問題を『週刊文春』で数回にわたって告発し、その過程で農民連食品分析センターにも取材に来られました。 昨年十二月の「中国青年報」という新聞の報道をきっかけに、厚生労働省も今年一月を「検査強化月間」と位置づけて、中国からの輸入野菜を全ロット検査しました。その結果、ブロッコリー、オオバ、ニラ、パクチョイ、サイシン、ケールの六種類九件から基準値を超える残留農薬が検出されています。 今日は、瀧井さんが取材を通じて見聞きした話を、いろいろとお聞きしたいと思っています。
都市など長期・広範囲に汚染瀧井 初めに断っておきますが、私は中国を敵対視しているわけではなく、むしろ日本が戦時中にやった残虐な行為を謝罪したいと思っています。しかし中国国内の農薬汚染については、ひどい状態だろうと推測しています。「中国青年報」の報道というのは、「中国国内で流通している野菜の五割近くに国内基準を上回る残留農薬が検出」(十二月十日付)というものです。厚生労働省が在北京日本大使館を通じて中国政府当局に確認したところ、これが事実だというので検査強化に乗り出しました。ここに、そこでいわれている国家質量監督検験検疫総局の資料がありますが、二〇〇一年の第三四半期に北京市や南京市など国内二十三都市でサンプル検査したところ、キャベツ、キュウリ、トマト、ナス、ニラなど十種類の野菜百八十六検体のうち、四七・五%にあたる八十六検体から、基準を上回る残留農薬が検出されたというものです。 もともと中国は、七〇年代から大量の農薬を使うようになりました。当時の政府の極秘文書が二十五年経って、最近手に入るようになっていますが、それを見ると、当局が検査したすべての野菜からDDT、BHCが検出されています。とんでもない状況です。 そういう状態を改めようと、中国政府もDDT、BHCの使用禁止をはじめ、いくつかの規制を作りましたが、あれだけ広い国ですからとても末端まで浸透せず、二十年以上にわたって農薬の乱用が続けられてきたというのが実態だと思います。
「中毒患者10万人超す」と報道石黒 農民連食品分析センターも、中国産のゴボウ、キヌサヤ、冷凍ほうれん草や冷凍枝豆などから、BHC、DDTの一種であるpp―DDE、クロルピリホス、フェンバレレートなどを検出しています。瀧井 それから、同じ「中国青年報」が、その一週間後に今度は、「毒菜による中毒患者が中国国内で年間十万人に上る」(十二月十七日付)という記事を掲載しました。記事によると、中国で使われている農薬は、有機リン系殺虫剤を中心に使用が禁止・制限されているものも含めて千種類以上にのぼり、使用量は二十万トンを超えるそうです。 しかしこの「毒菜中毒十万人説」については、いつのことなのか、農家の事故なのか、それとも毒菜を食べての中毒なのか、詳しいことはまだわかりません。ただPAN(国際農薬監視行動ネットワーク)という国際NPO(非営利組織)が、中国国内で収集した情報によれば、九五年に五万件近い農薬中毒が起きていて、三千二百人が死亡しており、八一年には二十八万九千人の中毒患者が出て、一万八千七百人が亡くなっています。ですから過去の数字と比べて、あり得ない数ではないと思っています。 残念ながら、中国の農薬汚染の実態は、こうしたPANや「人民日報」「中国青年報」によって断片的にわかるという状況です。DDTやBHCにしても、禁止後も生産されて使われていることは確かですが、どれくらい使われているかわかりません。いまDDTの生産工場に取材を申し込んでいるところです。輸出用と言われていますが、中国国内にも闇で流れていると推測しています。 石黒 香港では農薬まみれの中国野菜のことを“毒菜”と呼んでいるそうですね。
強烈な毒性におののく市民瀧井 ええ。香港では“ドッチョイ(毒菜)”と呼ばれて恐れられています。去年の夏には、北部の上水に住む一家五人がネギを食べて舌や手足のマヒ、めまいなどの症状で病院に運ばれています。香港の食物環境衛生検査署で調べた結果、禁止農薬のメタミドホスによる農薬中毒であることが判明しました。また、島部の香港仔に住む一家三人も近所の大手スーパーで買ったブロッコリーを食べて急性中毒を起こしています。九龍に住む主婦は「ほんとうにどうしようもない。困ったことです。毒菜は一時期よりは減ってきましたが、いくら政府が取り締まってもなかなかゼロにはなりません」と話していました。 毒菜が一番問題になったのは九〇年前後です。年間四百〜五百人の中毒患者が出て大きな社会問題になり、九五年ごろまで続きました。そこで政府当局がかなり厳しい規制に乗り出し、ようやく最近、年間数件の発生に減ってきたのです。 日本の厚生労働省にあたる食物環境衛生検査署は、国境近くで野菜輸送トラックを検査し、ここで禁止農薬や基準を超える農薬が見つかった業者は、今後いっさい輸入できなくしたのです。業者も戦々恐々として、生産する農場、農家を徹底指導しました。香港当局の厳しい取り締まりは、日本政府も学ぶところが大きいと思います。 〈続き〉
(新聞「農民」2002.4.1付)
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[2002年4月]
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