「農民」記事データベース20020325-532-09

母ちゃんたちに教わって

男の“十割そば”打ち奮戦記

長野県佐久市


思い通りにならないながらも…

 「十割そば(小麦などのつなぎを使わない、そば粉だけのそば)の教室をやろう」と、今年定年退職した祥一さん(60)と話をしていると、「オレも仲間に入れてくれ」と専業農家の文明さん(42)。公務員の守さん(55)、兼業農家の信行さん(39)が加わり、五人で話がまとまりました。区の新年宴会の席上でのことです。

 どうにかそばに

 後日、それぞれ道具一式をもって公民館に集合。祥一さんのカアチャンの芳江さんも、「うどんは得意だけど、そば打ちはどんなかしら」と顔を出しました。講師は、私が教えてくれと言っても取り合わないが、他の人に頼まれれば断らない、うちのカアチャン。

 そば粉五百グラムに熱湯二百五十ccを万遍なくふりかけ、冷めないうちに赤ん坊の頭をなでるように手早く指で混ぜてまとめる。ところがなでる時を勘違いした私は、いつまでもこねて冷やして悪戦苦闘。のし板が小さくて、そばがはみ出す人、めん棒が短くて困る人、ストーブの前でこねていて、そばが乾いてしまう人…。それでも皆、どうにか包丁で切り終えました。

 結局カアチャンが

 いよいよゆでる!

「ゆだって鍋から噴きこぼれそうになったら、ビックリ水をちょっとさす」などと講釈していると、「ゆでたら、そばにつやがあるうちに食べないと…」と、カアチャンに教わるのもそこそこに、男たちは食べ始めます。「これがオレの打ったそばか」「腰は強いが固くない」「うまい!」「つながってる!」と、ほめたり満足したりで、「ではもう一回打とう」。

 子どもや孫まで

 そのうちに、携帯電話で近所の知り合いに声をかける人、酒一本吊るして食べに来る人もいます。二度目が打ち終わるころには、受講者の子や孫、その友だちなどでごった返し、そばはたちまちなくなってしまいました。

 桃の節句に卒業式

 「短くても、太くても味がいいのが十割そば。習うより慣れろ」と言う、講師の師匠の荻原節子さん(元県生活改良普及員)。信行さんはその後、大きなのし板など一式を買い直して、四回も打ちました。かく言う私も二回。二月十日に二回目をやり、桃の節句の三回目の後、イッパイやって卒業式。もういつまでもやっておれません。凍みが融けないうちに冬菜の追肥もしなければと、「早春賦」の歌詞のように、気がせかれるのです。
(長野 小林節夫)

(新聞「農民」2002.3.25付)
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2002年3月

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