「農民」記事データベース20020311-530-04

――暮しと地域経済を破壊する――

富士通のリストラ攻撃〔長野〕

雇用責任投げ捨て利益追求

 高度成長期には兼業農民を使ってもうけ、不況になったら子会社や遠距離工場に配転、工場閉鎖、そして解雇。こうした状況が全国で広がっています。業績の悪化を「従業員が働かない」せいにして「企業の目的は利益。従業員の雇用には責任はない」という、エレクトロニクス大手の富士通・秋草社長。二万二千人のリストラで住民の暮らしと地域経済を破たんに追い込む富士通資本の暴挙の実態と農民連のたたかいを長野県佐久市と栄村で取材しました。
(長野県連 山下始胤)


 優良部門、分離して赤字化

 大正六年創業、東証二部上場、従業員三百人の高見沢電機。佐久市は地域の数少ない優良企業の一つとして信州工場拡張に協力、谷を埋め上下水道を敷いて工場敷地を作り、固定資産税も安くするなどして優遇、地域住民の安定的な雇用の場を確保してきました。

 ところが、会社の五三%の資本を握った富士通資本は昨年九月、二部上場を廃止し、前から欲しかった開発・販売・管理部門だけを取り上げて別会社にし、工場建物内に「ベルリンの壁」を作り行き来できないようにしてしまいました。製造部門だけになった高見沢電機の百人の従業員のうち間接部門の二十人は仕事がなく、八十人の製造部門も不採算の仕事ばかり。いつでもつぶせる体制におかれています。

 この攻撃とたたかっているJMIU(全日本金属情報機器労組)高見沢支部の百人の労働者のなかにいる佐久単一農民組合員は、「週三日も仕事がない時もある。米は一回で精算なので助かる。今年は米作りをしっかりやる」と言っています。

 労働者のほとんどは兼業農家で農業収入は赤字。農民組合では労働組合と話し合い「農民連に入って確定申告をしよう」と呼びかけています。県連事務局長も参加して二月四日、農民組合事務所で相談会をもったところ十八人が参加。「米は赤字なのに経費目安割合では一二%も所得が出る」と知った八人が加入し記帳を始めています。

 村との契約無視し全員解雇

 「お父さん、私、この三月でクビだって」と妻に言われた飯水岳北農民組合栄村支部の山岸正司さんはびっくり。

 会社閉鎖と従業員百七十九人全員に解雇通告したのは富士通の関連子会社、津南森電子工業株式会社(新潟県津南町)。

 従業員のうち隣りの栄村在住は三十五人で大半が女性。農民組合員は家族を含めて五人です。

 津南森電子の前身、昭和電子工業は栄村の誘致で一九六九年創業。以来、過疎の村は最大の雇用先として土地建物の提供、社屋の修繕費も支援してきました。しかし津南森電子工業は、誘致時に村と交わした契約解除の事前協議をせずに「存続が困難になった」との説明だけで閉鎖と全員解雇を決めたのです。

 「自分は三年前に会社をやめ農業だけの暮らし。妻がクビになったら生活できない」二月三日に開かれた村との懇談会で山岸さんは訴えました。高橋彦芳村長は「人口二千七百人の村で三十五人も雇用の場が失われるのは大変。誘致した責任もある。四月以降も働けるように」と、二月十三日に村長、議会議長で会社に申し入れしました。

 農民組合栄村支部は広瀬進支部長(村会議員)を中心に津南町の労働者とも話し合い、会社と交渉。同時に兼業農家の従業員に税金相談会への参加を呼びかけています。

(新聞「農民」2002.3.11付)
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2002年3月

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