「農民」記事データベース20020311-530-02

【どうなってんの?】農協中央(全中)

「米作付税」「米作付権売買」を提案

業界紙も「公平」どころか「農業の衰退をみんなで…」と批判

関連/水田農業の「終焉」は許されるか


 「生産調整研究会」が一月にスタートし、二月二十二日の第二回研究会では「生産調整」にとどめず、兼業農家排除などの構造政策や、政府による米の供給・流通管理責任を完全に放棄する流通制度を含めた米政策全般(ラージパッケージ)について検討を行うことを決めました。

 小泉流「米改革」阻止は「農」のつく委員しだい

 この研究会、二月二十五日付本紙でお伝えしたように、米の完全輸入自由化(関税化)を強行した元農水事務次官や御用評論家、財界代表が幅をきかせている最悪の布陣。同時に、二十二人の委員中、農協代表が九人、農業法人協会代表が一人で、「農」のつく委員が十人おり、この人たちが農民の声を本当に代表してがんばれば、小泉流「米改革」に待ったをかけることができるはず。

 現に、北海道、長野、滋賀、佐賀各県の農協中央会代表や、愛知・栃木県庁代表が「生産調整しながら、なぜ輸入なのか」と、農民の声を代弁して「ミニマム・アクセス米の輸入は生産調整に影響はない」という政府の言い分に反論しています。

 減反拡大は豊作のせいなどと言いはる全中山田専務

 ところが、全国農協中央会(全中)の山田俊男専務は一味も二味も違います。同専務は、二月十四日に開かれた研究会第三回企画部会で、減反拡大の原因が「需要の減少や豊作」だと言い、減反に取り組む者とそうでない者、過剰米処理費用を負担する者と負担しない者の「不公平感が最高のレベルにきており、手が着けられない状態にある」と発言しています。

 しかし第一に、日本に米輸入自由化を押しつけたアメリカは「減反」を廃止し、日本に米売り込みをかけている中国東北部は小麦や大豆を減反して米を増産しています。要りもしない輸入米を思い切って減らし、もっぱら国産米に押しつけられている減反を減らすことこそ最大の「不公平是正」ではありませんか。

 第二に、一九八〇年代まで「過剰米処理」は、政府が国家財政を使ってやってきました。ところが、いま米価がこんなに下がっているのに、農民から一俵(六十キロ)千五百円もふんだくって「過剰米処理」をしているのが実態。過剰米処理から大方手を引いている政府にカネを出させることこそが、公平というものではありませんか。

 政府の尻ぬぐいを農民に押しつける山田提案

 これほど農民の心情からかけ離れた言い方はありませんが、そのうえで山田全中専務は次のように、とんでもない提案をしています(山田専務が一月三十日の企画部会に提出した「課題メモ」)。

 (1)“米作付税”(米生産者全員もしくは流通する米全体から費用を徴収する法律の制定)

 (2)“米作付権売買”(生産目標の配分と調整において費用を徴収する)

 (3)“農業共済への上乗せ”(過剰米処理経費を農業共済制度の見直しと関連させ拠出・補てんする仕組み)

 (2)は全国に一律に減反目標(米の生産目標)を配分したうえで、米を作りたい人が、減反をやってもいいよという人に金を払って米作付権を買うという手法を考えているようです。

 とんでもない提案は芽のうちにつみとろう!!

 結局、外米輸入の削減も、政府の責任による過剰米処理も、まともに要求しないまま、米価暴落にあえぐ稲作農民すべてから「公平」に金をとりたてて政府の尻ぬぐいをする――。

 「公平とは聞こえがいいが、実態は強制、圧力であり、それで(稲作が)再生するならまだしも、皆で農業の衰退と死を見届けようというのだから話にならない」という米の業界紙「商経アドバイス」(2月28日)の批判は的を射ています。

 研究会の生源寺座長はこれを「積極的な提案」と評価しつつ「全中としてどこまで固めたものか……」と“心配”しています。

 実際、山田メモは農協系統の組織討議を経たものではありません。単位農協や都道府県の農協組織と大いに話し合い、こういうとんでもない提案を芽のうちにつみとろうではありませんか。


本紙2月25日の記事を読んで

水田農業の「終焉」は許されるか

西成 辰雄(西成辰雄秋田県前十文字町長)

 2月25日号の米の生産調整研究会の記事を読んだ。秋田県の農産物粗生産額に占める米の比率は最近でも六三・五%で(二〇〇〇年センサス)、米価の著しい下落で、一戸当たり生産農業所得は九五年の百七十一万九千円から七年間で七十万円も下がっている。

 一方、アフリカや南アジアなどでの慢性的な食料不足があり、人口増加も加わるなかで飢餓線上の栄養不足人口は三億人余あり、FAOによると発展途上国九十四カ国で八五年に比べて二〇〇〇年には米は五一%増、約四億トンの生産がめざされたが未達成で、アフリカでの伸び率はマイナスであるという。

 研究会では「備蓄を輸入米で」という意見も出ているようだが、自給を志す国民世論のなかで、安易という言葉では済まされない。日本の稲作の歴史、風土、さらに階層を超えた高い技術で国民の主食を提供してきた農民の立場と消費者の立場からも、今回の研究会の方針を見逃すことはできない。もしこれが実現されれば、まさに水田農業の終焉ともいうべきもので、許されることではない。

(新聞「農民」2002.3.11付)
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2002年3月

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