「農民」記事データベース20020304-529-14

シクラメンが農林水産大臣賞に輝く

“納得するものを作りたい”

福島・浜通り農業を守る会青年部部長 根本雄二さん

 太平洋に面して気候が温暖、なだらかな山と美しい田園風景が展開する福島県小高町でシクラメン栽培を行う根本雄二さん(23)。「シクラメンの花がどういう花だかすぐに思い出せなかった」と言う五年前、就農と同時に栃木県のシクラメン農家で一年間研修。昨年は全国花卉品評会に出品したシクラメンがみごと農林水産大臣賞を受賞しました。


5年前には、シクラメンがどういう花か、すぐには思い出せなかった

 父親の夢を引き継いで

 根本さんの家は、シャコバサボテン、シクラメンを中心に、君子ラン、ゼラニウム、ヘリクリサム、ニューギニヤインパチェンスを栽培する鉢花農家。父親の修二さん(49)は現在、シャコバサボテンの栽培を中心に行っています。以前、シクラメンを栽培していたこともありましたが、高い技術を必要とするため断念。しかし、シクラメンを作りたいという夢を持ち続けていました。その夢を息子に託し、シクラメンの栽培技術を基本から学んでもらおうと研修に送り出しました。

 研修後一年目から評判に

 雄二さんの研修後、スタートしたシクラメン栽培は今年で五作目。すでに一作目のシクラメンから市場で評判になり、今では青森から大阪まで十七の市場に出荷しています。

 シクラメンは、出荷最盛期の十二月にはもう来年の種まきを行います。根本さんは自家採取を行っていて、一月には採取用に残しておいた品質の良いシクラメンの受粉作業を行います。受賞した「アケボノ」という品種は、二作目に自分で種とりしたものだけに受賞の感慨もひとしおです。また、購入する種は、どんな色や形の品種が良く売れるか、その年の出荷が始まる前の六月に予測して注文します。種は一粒五十円もするとあって、先を見通したセンスが必要になってきます。

 朝早いのは苦手という雄二さんですが、朝六時には温室に行き、潅水作業を行います。また、根本さんの家では、十月中旬から十一月まで、葉数の多い、花首の締まったシクラメンを作るためにDIFという温度処理を行っています。夜間温度を十八度に保ち、朝の日の出と同時に温度を下げるこの処理のために、朝五時頃から三十分かけて窓あけ作業を行います。

 わからないことはすぐ研修先へ

 こうした技術はすべて研修に行った栃木県の吉原一成氏から教わりました。研修後も、わからないことがあるとすぐに栃木県に通い技術を教わりました。「親身になって、新しい技術もオープンに教えてくれた」と話す雄二さん。農林水産大臣賞を受賞した時、吉原さんは「俺の技術が認められた」と喜んでくれたといいます。

 喜んでもらうそれが一番!

 努力が実り農林水産大臣賞を受賞したことについて「これからが大変。シクラメンは毎年出来が違うのでまだ自信を持てません」と謙虚に話す雄二さんですが「作った花を、お客さんに喜んでもらえた時がうれしい、苦労してよかったと思う」と言います。

 根本さんのシクラメンは品質が高く、長持ちするため、また買いたいというお客さんが温室を訪れます。市場でも高く評価されていますが、昨年市場では五寸鉢のシクラメンが平均三百円。良い物は高く売れるものの、安いのは一鉢一円のものも出て、シクラメンなど鉢物全体の平均価格は年々下がっています。こうしたなか「去年作ったものよりもさらに良い物を作っていきたい。良い値段でも納得してもらえるようなものを作っていきたい」と雄二さんは話します。

 家族の支えと青年部の仲間

 シクラメンの栽培を始めた雄二さんについて、母親の絹子さんは「シクラメンでは息子が一人で走り回っていたので心配していました。今回の受賞は本当にうれしい」と話します。

 釣りが趣味で「最近、忙しくて釣りに行ってません」と話す雄二さんは、浜通り農業を守る会青年部の部長でもあります。昨年結婚し、今年四月にお父さんになるという雄二さん。地域農業を担う頼もしい青年です。

(新聞「農民」2002.3.4付)
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2002年3月

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