「農民」記事データベース20020225-528-11

神奈川・相模原

「てるて姫」

地元へのこだわりが生んだお酒


 「てるて姫」は、神奈川県相模原市の酒販店の二代目で構成する若手グループ「相照会」が作った地酒。この酒には“地元”へのこだわりがいっぱい詰まっています。

 「ラベルを張り替えただけでない、地元の酒米を使って本物の地元ブランドの日本酒を作りたかった」と、酒販店「ナカヤ」(電話〇四二-七六一-六一一四)を営む田所秀一郎さん(34)。その心意気に応えて、市内で無農薬の酒米「山田錦」を作っているのが、北相農民組合の平本典夫さん(52)が社長を務める(有)「青空農園」です。

 本物の地酒をつくりたい

 「“地元産”は、これからの重要な商品コンセプト。雪印事件は、ブランドがいかに当てにならないかを示した」と、田所さん。酒販店という商売についても、「ものを右から左に流しているだけではダメ。安売り競争では、大手やディスカウント店に勝てない。原点に返るしかないと思った」と言います。

 学生時代にフランスのワイン産地を訪ねて、「ワインを守るために、地域の農業を守っている」ことを肌身で感じてきた田所さんが、「青空農園」と出会ったのは三年前のこと。「青空農園」は、平本さんら農家と消費者が手を結び、市内の遊休農地を借りて作った無農薬・低農薬の米・野菜を地元の消費者に届けていました。

 本物の地酒をつくりたいと話を持ちかけた田所さんと平本さんは、たちまち意気投合。さっそく酒米作りがスタートしました。

 「景気が悪いと嘆いてばかりじゃ、つまらない。前を向いている平本さんの話は、同業者との会話よりおもしろかった」と田所さん。平本さんも、一生懸命に商売しようとしている田所さんの姿に、「お互いの持っている知恵やノウハウを生かしたいと思った」と振り返ります。

 「てるて姫」は、地元・相模原の故事に出てくる絶世の美女の名前。敵の武将と恋に落ちる和製「ロミオとジュリエット」のような話ですが、様々な人とのめぐり合いを通じて、最後は恋する人と結ばれます。故事にちなんで、「人とのつながりを大事に」という思いも込められています。

 消費者とともに農地を守る

 「青空農園」は、九一年の生産緑地法の改正をきっかけに、生産者と消費者の交流の場として始まった無農薬の米作りが出発点。十年の積み重ねのなかで、販路を広げ、農地を増やし、一昨年十月、農業生産法人として生まれ変わりました。全国でも珍しい消費者も出資する農業生産法人です。

 「消費者が楽しそうに、しかもきっちりと農作業を続けるなかで、まわりの農家の見る目も変わってきた。地元でとれた安心して食べられる農産物を求める消費者がたくさんいる。これが都市農業の強み」という平本さん。見つめる先は、二月二日に新装オープンした直売所のにぎわいです。

(新聞「農民」2002.2.25付)
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2002年2月

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