「農民」記事データベース20020225-528-10

安い農産物の向こう側

タイの農村はいま(最終回)

山本 博史


いつまで続く鶏肉の“一人勝ち”

 ていねいで勤勉な仕事ぶりと低賃金が、タイの食品加工業の発展を支えています。とくに、世界に広がる狂牛病の影響によって鶏肉の消費量が急増し、昨年のタイの鶏肉輸出は、過去三十年間で最高の三百億バーツ(九百億円)、百四十万トンに達したといわれています。なかでも欧米市場への輸出は、前年比一六四%の急増です。

 最大のシェアを誇るCPフーズは、東北タイの入口にあたるナコーンラチャシマ県パクトンチャイの百六十万ヘクタールという広大な敷地に、飼育・解体・加工の一貫作業を行う巨大農業コンプレックスを建設中。一週間の処理量を、三百万羽から四百万羽に拡大する計画です。

 世界最大の外食産業、マクドナルドも、現地法人・マックタイを中心に、タイをアジア太平洋地域における鶏肉生産拠点にしようとしています。現地担当役員は、「タイをアジアにおける鶏肉生産基地にすることでコストを削減し、この地域における二桁成長を達成したい」と期待を語っています。フィレオフィッシュに続いてチキンでもタイを拠点にするマクドナルドは、現在、タイ国内に九十五店舗、アジア太平洋三十七カ国に六千八百店舗を展開。二〇〇二年度にはさらに、六百店舗のオープンを計画しています。

 まるで“一人勝ち”の鶏肉加工業界ですが、一方では中国やアメリカで「人畜共通感染症」である鳥インフルエンザ発生の報道もあり、タイの鶏肉生産の急拡大がいつまで続くのか、不安要素もあります。

 「安いからアジアで」という流通業界の戦略が、一部の大型生協まで巻き込んで続けられていますが、これが現地の農民経済をゆがめ、環境破壊を生み、それが日本の消費者にとっても「食の安全性」をめぐる不安材料につながっているという連鎖(リンケージ)をどう打ち破るか――農民・市民による国際連帯が期待されます。

(おわり)

(新聞「農民」2002.2.25付)
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2002年2月

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