「おばあちゃんのお茶うけ」が本になりました文・写真 吉田文子
=信州の漬物・おやつ・郷土料理=新聞「農民」で連載していた、吉田文子さん執筆の「信州のおばあちゃんとお茶のみ」が、カラー写真と秘蔵レシピいっぱいの本になりました。吉田さんが以前住んでいた長野県は「お茶のみ」が盛んで、漬物、茶菓子、煮物など手作りの「お茶のこ」で気軽に人を招く暖かい土地柄です。吉田さんは信州各地のおばあちゃんのお茶のみを訪れ、その人生と家族の姿を、楽しくて温かいエッセイにまとめました。 山深い信州の恵みいっぱいの食生活の知恵や料理レシピも満載。冷凍、漬物、瓶詰などなど、どこでも、誰にでも取り入れることができ、加工にも役立つレシピがカラー写真入りで紹介されています。 農民連女性部長の高橋マス子さんの感想文を紹介します。
*『おばあちゃんのお茶うけ 信州の漬物・おやつ・郷土料理二四〇品』 発行川辺書林 定価千六百円(税別) 購入は全国書店で注文を
感心させられた「おばあちゃんの技」高橋マス子「食べもの」って不思議なものだと思います。毎日の食べ物が、その人の健康を左右するばかりでなく、おいしい食べ物は人を感動させたり、元気の源になったりします。ときには、舌に残った思い出の味が昔の情景を一気に引き寄せてくれたりもします。信州のおばあちゃんとのお茶のみから始まり、一年三カ月の取材でできあがったこの本は、そんな食べ物の不思議な力を感じさせてくれます。 信州の漬物、おやつ、郷土料理を紹介したこの本は、読んで楽しいことと、旬のものを加工したり、保存したりする知恵が詰まっています。おばあちゃんたちが、旬に大量に穫れたものをいかに上手に保存し、加工し、おいしくいただくか、知恵と工夫をこらしていることに感心させられます。 冷凍庫や冷蔵庫などが普及した現在でも、自給自足するしかなかった山国の人々の知恵が生きています。真冬に訪ねた長谷村では、雪の下の青い大根や甘いかぼちゃ、塩蔵セロリの青々とした香りに、吉田さんは感動し、都会に住む自分たちが一見便利な反面、「今あるものを工夫して使う力」がなくなって、無駄の多い貧しい食生活をしている、と反省しています。 「お茶のみ」という空間に提供される「お茶うけ」の料理の数もさることながら、そこで話されるおばあちゃん達の人生もたいしたものです。六十歳すぎから九十六歳の女性たちがたどってきた歴史や人生訓に興味をそそられます。戦争をくぐり抜けた辛苦の思い出、長年連れ添った夫婦のあり方、はては嫁姑がうまくいく心得(こころえ)まで気負いなく語られています。「動くのが年寄りの仕事」と言い切ってお元気な宮入さん(96歳)は、「いろんな人がいていいんだ。勉強だけで子供を評価するけど、人間の偉さは別のところにあるでしょう」と芯が通っています。 輸入食品があふれ、どこでどのように作られたかわからない食品が出回り、食の安全性がゆらいでいます。一方で食への無関心がゆがんだ食生活となって心や体の健康をむしばんでいます。「簡単・便利」に流されず、ちょっと立ち止まってみて、いま身近に穫れているものを、ひと手間かけておいしく食べる「おばあちゃんの技(わざ)」を学ぶ参考になるでしょう。
(新聞「農民」2002.2.18付)
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[2002年2月]
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