安い農産物の向こう側タイの農村はいま山本 博史
二期作中止農家に補償金タイ政府は、十一月半ばから二月半ばまでの三カ月間にわたり、市場価格よりも割高で、米の直接買い上げを実施しています。しかし、四百五十億バーツ(千三百五十億円)を投入してのこの施策も、販売されている米の半分しかカバーせず、残りの自由取引部分で値崩れの可能性が心配されています。そこで政府は、二月半ば以降に栽培が始まる乾期作米の耕作を中止した農家に対して、補償金を出して減反を奨励することになりました。 タイの二期作は、雨期と乾期の両方で稲作が行われることを指しますが、雨期はともかく、乾期は雨が降らない半年間ですから、雨期に降った雨を上流のダムに蓄えておいて、潅漑用水路から取水して耕作することになります。タイの水田のうち潅漑済みの面積は四割しかなく、それもほとんどが中部平原に集中しています。乾期作の作付面積は、全水田面積のわずか六%程度にすぎません。しかし、乾期作で栽培されている米は高収量品種が多く、十アール当たり平均収量は、雨期作米の二倍、米収穫量では全体の二割近くを占めています。 九〇年代半ばまでの急激な工業化と、連続した干ばつによる水不足で、タイ政府は、工業用水の優先確保のために乾期作を禁止する措置をとりましたが、これまでは補償もなく、あまり効果があがりませんでした。それを今回は、米価暴落のなかで、在庫増大を回避するために、補償金つき減反奨励策として実施することになったわけです。 政府がこれまで行ってきた価格介入策が、卸売業者などに中間搾取されて農民の手元に入っていないという非難も考慮して、今回の減反補償金は、農民に現金で直接支給することも検討されています。 こうしてタイ政府は、農家から割高で買い取った米を海外に割安で輸出するという、二重米価によるダンピング策のほかに、補助金つき減反政策も採用することになったのです。
(新聞「農民」2002.2.4付)
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[2002年2月]
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